先日、台湾文化部(日本でいう文化庁)が、台湾映画を代表する30作もの映画の名シーンをまとめた動画を公開した。この動画を見るだけで、「こんなに色々なジャンルの台湾映画があるんだな」とワクワクしてしまうこと間違いなし!
▼ナレーションは台湾語で、「楽しい時も、苦しい時も台湾映画は常にあなたといるよ」「夏休みは台湾映画を見よう」という内容
台湾映画が好きな人も、まだ台湾映画を見たことがない人も、台湾文化庁が厳選した映画から選べば、絶対ハズレなし!そこで、今回は台湾文化部がおすすめする台湾映画30選について、日頃から台湾映画を見ている我々日台夫婦の独自の解説も加えて紹介したい。胸キュンする恋愛映画から、台湾の歴史や伝統文化まで、あらゆるジャンルの台湾映画の中から、きっとお気に入りの映画が見つかるはず!
(台湾での公開年代順)
1. 海角七号 君想う、国境の南
- 原題:海角七號
- ジャンル:青春、ロマンス
- 公開年度:2008
台湾映画でも屈指の有名作で、『海角七号』をきっかけに台湾のことが好きになった日本人友人も多い。また、本作を皮切りに台湾映画のブームが再到来したと言ってもよいくらい台湾で大ヒットした。私が高校生の頃は、この映画の感想文を国語の授業で書かされたくらいだ。
台湾最南端の屏東県「恆春」を舞台にしているので、見ていると南台湾へ観光しに行きたくなっちゃう。何よりも、映画内で流れる音楽がどれも良い。学生時代にバンドでやりたかったなー。
▶詳しい解説・感想:台湾映画『海角七号 君想う、国境の南』:あらすじと台湾映画における意義
【あらすじ】
1940年代と現代の台湾を舞台に、約60年間届かなかったラブレターと、2つの時代の恋をつなぐ恋愛・青春映画。
1940年代、日本植民地時代だった台湾で、若い日本人教師が台湾人女性の教え子と恋に落ちた話と、その60年後、ミュージシャンの夢敗れ、故郷に戻った青年阿嘉(アガ)と、日本人女性友子が仕事で出会うが、二人の仲は…。
2. モンガに散る
- 原題:艋舺
- ジャンル:青春、極道
- 公開年度:2010
モンガ(艋舺)は今でいう「萬華」で、龍山寺など観光地としておなじみの場所である。観光客で繁盛するモンガだが、清朝から栄えた古い街で、実は極道が覇権争いをしていたと言われている。
龍山寺に行っただけでは分からないモンガの歴史について、『モンガに散る』では分かりやすく説明している。若くして黒社会の道に入ってしまった青年たちの切ない友情や、暴力的かつ詩的な極道世界を表現しているところが良い。なお、夫は極道の親分に惹かれたようだ。
▶詳しい解説・感想:台湾映画『モンガに散る』:台湾の極道「角頭」と「幫派」
【あらすじ】
1986年、台北一の繁華街・艋舺(モンガ)は商業地区として繁栄する裏で、多くの極道組織が覇権争いを繰り広げていた。
ある日、この街に引っ越してきた高校生の蚊子(モスキート)は、モンガで一番の権力を持つ極道の親分の息子や、その仲間たちと出会う。意気投合した彼らの青春や闘争、真の友情について描く。
3. ナイトマーケット・ヒーロー
- 原題:雞排英雄
- ジャンル:コメディ、人情
- 公開年度:2011
雞排(ジーパイ)は台湾夜市で売られているフライドチキンのこと。「ジーパイヒーロー」という名の通り、この映画は台湾の夜市を舞台にした映画で、見ているだけで夜市B級グルメの香り(臭豆腐の臭さ?)が漂ってくるようだ。
日本語字幕版はオンデマンド配信(VOD)が見当たらないようだが、『ナイトマーケット・ヒーロー』を見れば、夜市と裏社会の関係など、ちょっとディープな台湾が見えてくるかも?!
【あらすじ】
台湾グルメに溢れるある夜市の自治会長に選出された青年阿華(アーホア)は、夜市に店を構える人々と商売を営み、平穏な暮らしをしていた。
ある日、政治家と企業が共謀して夜市の土地を買い上げ、大規模複合商業施設に変えようとしはじめ、阿華たちはそれに立ち向かおうとするが…。
4. あの頃、君を追いかけた
- 原題:那些年,我們一起追的女孩
- ジャンル:恋愛、青春
- 公開年度:2011
台湾で有名な青春恋愛映画で、2018年に山田裕貴、齋藤飛鳥主演で日本リメイク版が上映されている。台湾作家九把刀の小説を映画化したもので、甘酸っぱくい初恋を描いているが、「私だってこんな青春したかった!」と思わず泣いてしまうだろう。
なお、観光地として有名な十分、平渓線(九份あたりのローカル線)もロケ地になっている。また、主題曲「那些年」も大ヒットし、学生時代だった私は毎週のようにカラオケで熱唱してた(笑)
【あらすじ】
1994年、台湾彰化県の男子高校生柯騰(コートン)は、いたずら好きな悪友たちとつるんで担任の先生を困らせていた。そこで担任は、優等生の女子生徒佳宜(チアイー)を監視役としてコートンの後ろの席に座らせることに。
コートンは口うるさいチアイーをわずらわしく感じながらも、勉強を励むようになり、徐々に彼女に惹かれていく。
5. セデック・バレ 第一部 太陽旗/第二部 虹の橋
- 原題:賽德克·巴萊(上)太陽旗/(下)彩虹橋
- ジャンル:歴史、アクション
- 公開年度:2011
前述した『海角七号 君想う、国境の南』と同じ魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督の作品だが、『セデック・バレ』で作風は一転し、日本植民地時代だった台湾で実際に起きた史実「霧社事件」に基づいた映画である。台湾で上映された当時は大話題になり、なかなか空席のある映画館が見当たらず、第一部しか見れなかったと覚えている。
台湾に住む原住民が決起するという重い話題だが、リアリティーを追求して、原住民の役者を起用、CGを使わず実際に山で戦闘シーンを撮影したのが印象的。日本統治時代、台湾原住民の歴史について深く知ることができる名作だ。
▶詳しい解説・感想:台湾映画『セデック・バレ』:台湾の原住民族と魏徳聖の三部作
【あらすじ】
台湾のセデック族は、昔から山岳地帯で狩猟をして暮らしていた。しかし、日本統治時代になると、日本の風習や言語などを受け入れることを強制されたり、少ない賃金による労働を強いられていた。
統治開始から35年がたったある日、日本人警察官と衝突したことをきっかけに、セデック族は頭目のモーナ・ルダオを中心に、武装蜂起を決意する。
6. ハーバー・クライシス<湾岸危機>Black & White Episode 1
- 原題:痞子英雄首部曲:全面開戰
- ジャンル:アクション、サスペンス
- 公開年度:2012
ハーバー・クライシス?湾岸危機?ハリウッド映画なの?と思わせるようなタイトルだが、そう、台湾映画にもアクションエンタメ映画があるのだ。台湾でも話題だったテレビドラマ『ブラック&ホワイト』(痞子英雄)の映画版で、エピソード2まで出ている。
台湾と中国大陸の合弁で制作された映画で、中国・香港の役者も参加している。刑事と犯罪組織の話はもちろん、各地域出身の中国語(北京語)の訛りの違いを聞き取るのも面白いかも。
【あらすじ】
新米刑事の吳英雄(ウー・インション)は、正義感が強いあまり、犯人を追って市内をめちゃくちゃに荒らしてしまう。
一方、犯罪組織・三連会の構成員である徐達夫(シュー・ダーフー)は、ヤクザ暮らしから足を洗い、恋人と幸せに暮らすことを夢見ていた。そんな真逆な二人が、国家規模の陰謀に放り込まれる。
7. 陣頭(Din Tao:Leader of the Parade)
- 原題:陣頭
- ジャンル:青春
- 公開年度:2012
日本訳は出ていないようだが、『陣頭』は台湾の実話に基づいた映画である。「陣頭」とは、台湾の「廟會」(道教のお寺のお祭り・縁日のようなイベント)で繰り広げられる太鼓・踊りなどの伝統芸能である。台湾には色んな「陣頭」の団体がいるが、特に台中の「九天民俗技芸館」が中退した学生などを集めて訓練し、「陣頭」を民間伝統芸能から、世界各国で出演できるレベルまで高めた。
そして、『陣頭』という映画では「九天民俗技芸館」の奮闘を描いた映画なのだ。ほぼ台湾語で会話が進むので、超ローカルな台湾文化を味わえるはず。
【あらすじ】
主人公の阿泰は台中の陣頭の名家に生まれたが、幼いころからいたずら好きで、父親からは才能がない息子と見なされていたが、あるきっかけで団長の地についてしまう。
陣頭のメンバーたちからも能力を疑われ、ライバルの陣頭団体からもバカにされるが、阿泰はメンバーを率いて、台湾の陣頭文化をより広めるべく奮闘する。
8. 愛 LOVE
- 原題:愛 LOVE
- ジャンル:恋愛
- 公開年度:2012
こちらも日本の映画祭では上映されたが、一般公開はされていないようだ。台湾版『ラブ・アクチュアリー』とも言われ、北京と台湾にいる8人の男女が繰り広げるアンサンブル・ラブストーリーである。
特に驚きなのが豪勢なキャスト陣で、中国・台湾の超有名俳優と女優を起用している。愛すること、愛されること、愛情と友情について、台北と北京のモダンな大都会を描写しながら語っている。
【あらすじ】
自分が無個性で無特徴だと悩む女性・宜珈と、裕福な家に生まれ、美貌も才能も生まれ持った小霓、小霓の彼氏でいつか映画監督になることを夢見る阿凱。
三人は良好な友情関係を保っていたが、ある日宜珈の妊娠が発覚したことを機に、関係が崩れていく…。
9. GF*BF
- 原題:女朋友。男朋友
- ジャンル:恋愛
- 公開年度:2012
タイトルの字面上の意味「ガールフレンド。ボーイフレンド」を見ると、青春恋愛映画かと思ってしまいそうだが、実は台湾の政治や社会背景まで描いた深い内容である。
舞台は戒厳令下の1985年から2012年までの台湾、27年間にわたる男二人と女一人の三角関係をめぐり、三人の切ない友情や愛情を、1990年の学生運動や激動した台湾社会とあわせて描いている。
【あらすじ】
1985年戒厳令下の台湾・高雄に住む高校生の美寶(メイバオ)、忠良(チョンリャン)、心仁(シンレン)ら三人は、厳しい思想の統制や校則に不満を抱きながらも、日々青春を謳歌していた。
美寶と忠良は周囲が認めるカップルだったが、ある日忠良に「ただの友だち」と告げられた心仁は、隠していた自分の気持ちを美宝に伝える…。
10. 結婚って、幸せですか THE MOVIE
- 原題:犀利人妻最終回:幸福男・不難
- ジャンル:恋愛
- 公開年度:2012
台湾の原題『犀利人妻』は直訳すると、鋭い・凄腕な人妻という意味かなと思うが、台湾で社会現象を巻き起こしたドラマの名前だ(日本語訳『結婚って、幸せですか』)。不倫をきっかけに、夫婦の争いや成長をテーマにしたドラマだが、奥さんが不倫した旦那さんに放った一言「可是瑞凡,我回不去了」(でもね、ルイファン、私はもう戻れないの)は、半沢直樹の「倍返しだ!」くらい台湾でヒットし、テレビCM・広告で多用されたくらいだ。
ドラマでは、不倫された奥さんが夫婦関係の修復を試みるも、自力で幸せを再度掴み取ろうとする話。そして映画版は、ドラマの結末からさらに四年経った後の話を描く。
【あらすじ】
安真(アンジェン)は離婚して4年、OLと主婦の顔を持つ彼女は、仕事も生活も充実していた。天蔚(ティエンウェイ)から猛烈なアプローチを受けるものの、新たな恋に踏み出せず、彼とは「友達関係」を続けていた。
天蔚を受け入れて、新しい一歩を踏み出すか悩むと同時に、元夫の瑞凡(ルイファン)も現れ、再度安真にアプローチをかけてくる…。
【まとめ】2008年~2012年の台湾映画
今回は『海角七号』によって台湾映画のブームが再到来した2008年から、2012年までの映画を紹介した。ちょうど2008年から2012年までの台湾総統(大統領)は国民党の馬英九で、中国大陸との距離感が比較的近かったためか、中国との合作映画も多かった気がする。
台湾文化部(文化庁)の紹介動画では、まだまだ他にも台湾映画の傑作20作が残っているので、また次回の記事で紹介したい!
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