Netflixの台湾ドラマ『天巡者』は、台湾民間信仰・道教の神話を多く取り入れ、魔除けの神様「鍾馗」、忘却を司る冥府の女神「孟婆」、土地の守護神「城隍」、冥途の王「秦広王」など多くの神様が登場します。
前回の記事では鍾馗の前世(なぜ一般人から神様になったのか)や、宿敵「盧杞」についての神話と中国野史を紹介しました。今回は、前回紹介しきれなかった鍾馗のもう一つの伝説、「鍾馗嫁妹」=鍾馗が自分の妹を知人の「杜平」に嫁がせる逸話について紹介したいと思います。
鍾馗嫁妹(鍾馗、妹を嫁がせる)
前回の記事では、「鍾馗はもともと中国唐代の優秀な文人で、科挙(中国歴史上の官僚登用試験)に一位で合格したものの採用してもらえず自殺し、その後神様になった」と紹介しました。鍾馗が神様になった後、人間界に残してきた妹・媚兒(メイアー)と、彼の恩人・杜平(ドゥー・ピン)が心残りであったため、2人を結婚させたという逸話が残っています。
神様になった後の鍾馗は、人間界に残してきた妹のことが心配であった。ある日、妹が悪党に無理やり結婚させられそうになっていると察知した鍾馗はすぐさま人間界にかけつけ、部下の鬼たちに嫁入り道具やお御輿、提灯を用意させ、鬼の行列を作って悪党を驚かせ、退散させた。その後、鍾馗は妹をお世話になった親友・杜平に嫁がせ、安心して人間界を離れたのだ。
『天巡者』における「鍾馗嫁妹」のアレンジ
以下よりネタバレにご注意ください!
ドラマ『天巡者』では、後半で鍾馗の妹と、彼の恩人であった杜平の話が登場します。
実は李恩熙(リー・エンシー)が転生した後の鍾馗の妹・媚兒で、それを知った鍾馗は必死に彼女のことを守ろうとします。ただし、恩熙(エンシー)はもちろん前世の記憶は残っておらず、ドラマの前半では鍾馗を見るとくしゃみが止まらず、アレルギー反応を示していました。
しかし、ドラマの後半では、自分が嫁に行くような恰好をしている夢を見て、ぼんやりながら前世の「鍾馗嫁妹」(鍾馗の妹の結婚)の光景を思い出します。
このシーンの恩熙役の女優さん「程雅晨(チョン・ヤーチェン)」は、中国古代風の花嫁姿がとっても綺麗だなと思いました。(お兄さんの鍾馗が現代の服装を着ているのは違和感を感じました。唐代にいるはずなのに?!)
また、『天巡者』で私が一番好きだった登場人物は「歐陽凱」(オウヤン・カイ)。恩熙(エンシー)に対する一途で温かく見守り続け、最終話で自分の命を捨ててまで恩熙を守ったシーンは、このドラマで一番泣けました。
なぜ彼はここまで恩熙のことを深く愛したのか。「鍾馗嫁妹」の伝説を踏まえ、ドラマ最終話では、歐陽凱(オウヤン・カイ)は鍾馗の恩人で、妹の媚兒と結婚した「杜平」だと明かされます。杜平(=歐陽凱)は媚兒(=李恩熙)と七世もの夫婦のご縁があるので、転生を待つ歐陽凱は来世ではきっと恩熙と結ばれるのでしょう。
なお、ドラマを見始めた頃は、歐陽凱はお金持ちのボンボンで性格が悪そうだなと思っていましたが、話が進むにつれて、彼は「優しいし、一途だし、ユーモアがあるし、鍾馗が頼んだ仕事もできるし、お金もあるし(重要)」こんな完璧な人いる?と思いました。あと、歐陽凱の古代装束も見たかったな(笑)
以上、「鍾馗嫁妹」(鍾馗が妹を嫁がせる)の伝説をもとに、鍾馗の妹と恩人の杜平について紹介しました。道教の民間伝承を取り入れ、現代風にアレンジしているのが、ドラマ『天巡者』の魅力なので、ぜひドラマを通して台湾の民間信仰も知っていただけると嬉しいです。
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