鍾馗はなぜ神様になった?盧杞との関係は?-台湾ドラマ『天巡者』から見る鍾馗伝説

Netflixの台湾ドラマ『天巡者』は、台湾民間信仰・道教の神話を多く取り入れ、魔除けの神様「鍾馗」、忘却を司る冥府の女神「孟婆」、土地の守護神「城隍」、冥途の王「秦広王」など多くの神様が登場します。特にドラマの終盤では、鍾馗の前世(なぜ一般人から神様になったのか)や、宿敵「盧杞」の話が登場しますが、実はドラマの創作ではなく、道教の神話や中国の野史に基づいています。

そこで今回は、台湾人に馴染みの深い鍾馗の伝説を紹介したいと思います。

鍾馗が神様になった由来

鍾馗はもともと中国唐代に実在した人物だと言われています。由来は諸説ありますが、台湾でよく知られるのは以下の二説です。

①唐玄宗の夢に登場した説

こちらの説は以前の『天巡者』を紹介する記事でも取り上げましたが、再掲します。

唐代の皇帝・唐玄宗が高熱で床に臥せる中、夢の中で小鬼が登場し、玄宗の玉笛や楊貴妃のにおい袋を盗もうとする。すると巨大な鬼が登場して小鬼を喰べてしまう。玄宗が驚くと、巨大な鬼は「鍾馗」と名乗り、「唐高祖の代に科挙(国家試験)を受験したものの落第したため、恥ずかしさから自殺した。ところが皇帝の唐高祖が手厚く葬ってくださったので、妖怪どもを退治して恩に報いようとした」と言う。

その後、目が覚めた玄宗は病もすっかり治ったので、夢の中で見た鍾馗の姿を唐代の有名な画家・呉道玄に描いてもらい、鍾馗の絵を飾り魔除けするよう民間に広めたという。

②唐徳宗の代の文化人説

同じく唐代の人物ですが、もう一つの説です。

鍾馗は唐徳宗の代に実在した人物で、顔は強面だが学問に秀でた。

ある日、鍾馗は知人たちに見送られ、科挙(国家試験)を受けに唐代の首都「長安」まで出向かう。聡明な鍾馗は容易く試験をクリアし、試験官・韓愈(唐代の文人)も「李白、杜甫など唐朝の著名詩人に次ぐ逸材だ」と彼の才能を認め、鍾馗が今回の試験の「状元」(第一位)だと決める。

当時の皇帝・唐徳宗も鍾馗の才能に関心を抱き、直接会うことになったが、鍾馗の強面に驚き、「顔が怖くて醜い、文人の優雅な風貌とは程遠い」と主張して不合格にする。韓愈は顔で判断することに反対するものの、皇帝に逆らえず他の人選を探す。

顔が理由で不合格・不採用になったことを聞いた鍾馗は激怒し、怒りのあまり宮廷内で自殺する。亡くなった後、冥府で閻魔大王に会った鍾馗は自分の無念を告げ、かっとなってしまったので大暴れし、近くの悪霊や鬼を追いかけ回り、殴り続ける。 彼の形相に閻魔大王も驚き、さらには玉皇大帝(道教の最高神)もその噂を聞きつけ、鍾馗の気迫が悪霊や鬼を怖がらせていることや、彼の境遇に道場したため、彼悪霊退治の神様「驅魔真君(駆魔真君)」に任命する。

この説は日本ではあまり聞かないですが、台湾ではかなり有名で、怖い形相をした鍾馗の絵を飾れば悪霊退治できると信仰されています。なお、ドラマ『天巡者』の第3話で、恩熙(エンシー)が「鍾馗が鬼退治?あんなに醜いのに?」(鍾馗長得這麼醜)と話したのも、この伝説を基にしているのです。

以下よりネタバレにご注意ください!


鍾馗と盧杞の関係

『天巡者』の後半では、鍾馗の宿敵である「盧杞」が登場します。私もこのドラマを見てから知ったのですが、「盧杞」は中国唐代に実在した人物だそうです。

『天巡者』を制作したテレビ局「三立」によると、ドラマ内の盧杞のモデルになったは唐代の有名な奸臣「盧杞」で、制作チームは中国の歴史、野史における盧杞の伝説や人物造形に基き、ドラマ内で鍾馗の「千年の宿敵」として登場させたといいます。

公式Facebook「三立華劇」より引用

上記の通り、公式Facebookで盧杞に関する伝説をまとめてくれているので、簡単に訳してみます。

盧杞は唐徳宗時代の宰相(中国の宮廷で君主を補佐する最高位の官職)で、歴史上もっとも有名な奸臣。才能もあり能弁であったが、狡猾で心が狭く、唐代の軍人・政治家「郭子儀」も「心が陰険な人」と称したという。

盧杞は自分より才能がある人を妬み、多くの知識人(楊炎、張鎰、顔真卿)を陥れたといわれる。また、鍾馗が科挙で一位を取った時も、盧杞が横から唐徳宗にありもしないことを伝え、鍾馗を不採用にしたという。

なお、上記鍾馗の伝説②「唐徳宗の代の文化人説」では、盧杞に誹謗中傷されたため、不採用となってしまった鍾馗は怒って盧杞を殴り、その後自殺するという逸話があります。ただし、盧杞が宰相を務めた年代と、韓愈が試験官になり得る年代に齟齬があるので、作り話だと考えられます。

ドラマ『天巡者』では、鍾馗は前世で盧杞のせいで自殺した、という設定になっていますが、これも上記の伝説に基づいているのです。

以上、鍾馗が神様になった由来と、盧杞のモデルになった歴史上の人物について紹介しました。ドラマ『天巡者』は他にも「鍾馗嫁妹」(鍾馗が妹を嫁に行かせる)の伝説をアレンジしているので、また次回に紹介したいと思います。


※参考資料(台湾華語):讀書狀元搖身一變成鬼王 鍾馗的故事 | 寶島神很大online

※台湾ドラマ『天巡者』他の紹介記事はこちらから


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