『華燈初上 -夜を生きる女たち-』シーズン2に登場する台湾や日本の楽曲【挿入歌】

Netflixで配信中の台湾ドラマ『華燈初上 -夜を生きる女たち-』は、80年代の台北・林森北路にある日系ナイトクラブ「光」を舞台に、ママさんやホステスらの愛憎劇や、謎の殺人事件をめぐって話が展開していきます。

主な舞台が日系ナイトクラブであるため、カラオケでホステスやお客さんが歌うシーンも多く、70~80年代の台湾で有名だった歌や、日本の名曲も多数登場し、登場人物間で交差する愛情や嫉妬をより一層引き立てています。

前回の記事では、シーズン1に登場する北京語、台湾語、広東語の楽曲を紹介しました。今回は『華燈初上』シーズン2で、挿入歌として使われた台湾と日本の楽曲をご紹介します。歌が流れるシーンを歌詞やメロディーとあわせて鑑賞すると、登場人物たちの心境にもより共感できるはずです。

※一部ネタバレがありますのでご注意ください

第11話「愛的煩惱」/ 崔苔菁【北京語】

『華燈初上』シーズン2が放送される前から、呉慷仁(ウー・カンレン)が初めて女装役に挑戦し、男性ママさん役「寶寶ママ」(ベイビーママ)を演じることが話題になっていました。シーズン2第11話で待望の女装シーンが流れ、華麗なる衣装と妖艶な踊りが、崔苔菁(CUI TING-JING)の「愛的煩惱」という歌とあわせて披露されました。

※画像は公式Facebook「華燈初上」より

崔苔菁は台北生まれの歌手。15歳にデビューし、まだ保守的であった1970~1980年代の台湾で、セクシーな服装とダンス、甘い歌声で一世を風靡し、「一代妖姬」(一代の妖艶な姫)と称されていました。第11話で使われたのは、彼女の70年代に歌った「愛的煩惱」という歌。直訳すると「愛の悩み」という意味。「愛的煩惱、愛的煩惱」という歌い出しに続き、「恋の悩み」「夢にも出てくる甘い恋」「忘れられない恋人」などの、軽快なメロディーとキャップのある歌詞が続きます。

呉慷仁(ウー・カンレン)が演じる「寶寶ママ」(ベイビーママ)も、妖艶な服装とダンスを披露しており、70~80年代に「一代妖姫」と呼ばれた崔苔菁のイメージをうまく再現しています。

なお、女装ママさん役を演じるにあたり、呉慷仁(ウー・カンレン)は実際にドラァグクイーンに取材したり、ダンスのレッスンも受けたりし、よりリアルな役作りに励んだといいます。以下の動画から、ハイヒールを履いて踊っているその姿を見れますが、女性も顔負けのセクシーさですね。

第12話「からたちの花」/ 日本の童謡【日本語】

呉慷仁(ウー・カンレン)以外に、『華燈初上』シーズン2では徐若瑄(ビビアン・スー)や霍建華(ウォレス・フォ)、9m88などの豪華キャストが出演しています。

第12話では、徐若瑄(ビビアン・スー)演じるスナック「光」の元オーナー兼ママさん「瓊芳」と、9m88演じる当時のホステス「Joanne」が登場し、9m88が阿季と一緒に日本の童謡「からたちの花」を歌うシーンがあります。(以下動画の冒頭に少し写ります)

「からたちの花」は、北原白秋作詞、山田耕筰作曲、1925年(大正14年)に発表された日本の童謡。2007年に日本の歌百選に選出されている歌です。私はこの童謡があることを知らなかったので、調べてみたら、作曲した山田耕筰が幼少期に工場で働いた経験を基にした楽曲でした。

『からたちの花』の歌詞は、山田耕筰の少年期の体験が元になっている。耕筰は幼い頃養子に出され、活版工場で勤労しながら夜学で学んでいた。

山田耕筰は自伝において、「工場でつらい目に遭うと、からたちの垣根まで逃げ出して泣いた」と述懐している。この思い出を北原白秋が詩にしたためた。

からたちの花 日本の童謡・唱歌 解説と試聴

ドラマで9m88や阿季役の謝瓊煖が歌った歌詞「からたちの花が咲いたよ、白い白い花が咲いたよ」「からたちのとげはいたいよ、靑い靑い針のとげだよ」は、お葬式の時は白いバラを飾ってほしいという、スーママこと蘇慶儀(スー・チンイー)を象徴しているのではないかと思います。

からたち(枳殻、枸橘)は、ミカン科カラタチ属の落葉低木で、バラとは関係ありませんでしたが、枝にとても鋭いトゲがあり、白い花を咲かせる点では、白バラに類似しています。9m88と謝瓊煖が歌う「からたちの歌」をバックに、徐若瑄(ビビアン・スー)演じるママさんが、若いころにスーママ(当時はまだホステス)に、「欲張りはだめよ、すべてを手に入れることはできない」「あなたは物腰は柔らかいけど、誰よりも頑固ね。完璧を求めすぎると自分が傷つく」とアドバイスします。

「可愛らしく可憐な白い花を咲かせるも、刺々しく人を傷つける枝を持っている」白バラとからたちの花は、まさに「見た目は優しく柔らかいが、実はアグレッシブで周りと自分を傷つけている」スーママを仄めかしていると受け取れます。ちょうどこのシーンでスーママが真っ白な服を着ているので、意図的な象徴を感じます。

なお、9m88は徐若瑄(ビビアン・スー)や謝瓊煖(シエ・チョンシュアン)と共演できたこと、少し歌声を披露できたことに対して、名女優やスターと舞台を共にできてとても光栄だと述べています。

第16話「夜裡無星」/ 告五人【北京語】

シーズン2の最終話では、スーママの策略(復讐?)により脚本家の職を失った江翰(ジャン・ハン)が、縁あってローズママの息子・吳子維(ウー・ズーウェイ)が通う中学校で、演劇部の顧問を務めることになります。子維(ズーウェイ)ら生徒の演劇を江翰(ジャン・ハン)とローズママが鑑賞し終わった後、江翰(ジャン・ハン)がローズママに「ごめんなさい」と謝ります。二人のわだかまりが解けるこのシーンでは、台湾のバンド「告五人」(AccuseFive)の「夜裡無星」(2019年リリース)が流れます。

実はシーズン1の最終話(第8話)でも、愛子がスナック光も学校も辞め、泣いている時にこの歌が流れました。「夜裡無星」は直訳すると「夜空に星が見えない」。シーズン1でホステスの職を追われ、学校も辞めた愛子や、同じく職を失った江翰(ジャン・ハン)が、人生のどん底に落ち、明るい希望が見えない切なさを歌い上げています。

※画像は公式Facebook「華燈初上」より

以上、ドラマ『華燈初上』シーズン2に登場する台湾や日本の楽曲を紹介しました。名曲のメロディーや歌詞を通して、寶寶ママ(ベイビーママ)の人物造形や、スーママと江翰(ジャン・ハン)ら登場人物たちの心境により近づけたのではないでしょうか。


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