『僕と幽霊が家族になった件』蔡依林 Jolinの主題歌・挿入歌とLGBTQ+への眼差し

僕と幽霊が家族になった件』(原題:關於我和鬼變成家人的那件事、英語題名:Marry My Dead Body)は、2023年2月から台湾で上映されて大ヒットした台湾映画。

異性愛の男性警官が、同性愛の亡くなった男性と冥婚することになり、彼の事故の真相を追っていくうちに大きな事件にも繋がっていく……「冥婚×同性婚」という斬新なテーマ。日本やグローバルのNetflixでも8/10から見れるようになりました。

今回は、本作の主題歌と、目玉シーンでもあるポールダンスのシーンと、ゲイバーで流れていた挿入歌ついて紹介したいと思います。いずれも台湾の有名な女性歌手「蔡依林 Jolin(ジョリン・ツァイ)」の楽曲ですが、彼女は本作のテーマであるLGBTQ+とも関係が深いのです。

一部ネタバレがあるのでご留意ください!

【挿入歌】蔡依林 Jolin Tsai《舞孃》

台湾で特に話題になったシーンとして、許光漢(グレッグ・ハン)が演じるノンケの警察官 呉明翰(ウー・ミンハン)が、毛毛に憑依されて全裸でポールダンスを街中で踊ったシーンが挙げられます。

台湾のNetflix公式Instagramで一部動画があがっていますが、現時点で120万回再生されています(2023年8月末時点)。

このシーンで許光漢(グレッグ・ハン)が口ずさんでいる歌は、蔡依林 Jolinの「舞孃(Dancing Diva)」という曲です。

2006年の曲ですが、当日の大ヒット曲となり、私も学生時代ではよく皆とカラオケで歌ったり、街中でよく聞くような名曲です。

映画内で許光漢(グレッグ・ハン)が歌ったサビの部分は、私は今でも暗記しているのですが、多くの同世代の台湾人も歌詞を見ずに歌えると思います。なので、映画内で許光漢(グレッグ・ハン)が歌って、劉冠廷(リウ・グアンティン)が続いて歌い出すところはとても共感できました(笑)

旋轉 跳躍 我閉著眼
塵囂看不見 你沈醉了沒

白雪 夏夜 我不停歇
模糊了年歲 時光的沙漏被我踩碎

蔡依林 Jolin Tsai「舞孃」歌詞より

なお、「舞孃」は日本語に訳すと「踊り子」という意味です。例えば、川端康成『伊豆の踊子』は台湾では『伊豆的舞孃』と訳されています。この映画では、許光漢(グレッグ・ハン)が見事に色気のある「舞孃」を演じましたね。

【挿入歌】蔡依林 Jolin Tsai《愛無赦》

呉明翰(ウー・ミンハン)と毛毛が捜査でゲイバーに乗り込んだ時、お店のBGMとしてかかっていた音楽は、蔡依林 Jolinの「愛無赦(Bravo Lover)」という曲です。

2015年に公開された曲で、クラブミュージック感溢れるリズムと毛毛のダンスがぴったりでした。

中でもサビの「Go Go Sister Go Go Brother」という歌詞や、他の部分でも「愛は自由でなければならない」という歌詞が盛り込まれており、この映画の「LGBTQ+などの性的指向に関わらず、人を愛する/人に愛される自由がある」というテーマをうまくリンクしています。

Go Go Sister Go Go Brother
愛情大同 天下為公
Go Go Lover Bravo Lover
酸甜苦樂 真愛無赦 You’re My Lover

蔡依林 Jolin Tsai「愛無赦」歌詞より

【主題歌】蔡依林 Jolin Tsai《親愛的對象 Untitled》

映画『僕と幽霊が家族になった件』の主題歌は、挿入歌と同じく蔡依林 Jolinの「親愛的對象 Untitled」という新曲です。

MVには映画の登場人物である毛毛と、彼がLGBTG+であることに理解を示す祖母が登場します。映画のプロローグとして毛毛が祖母に自分の性的指向を隠すが、どうカミングアウトすべきか悩む姿が描かれます。MVには蔡依林 JolinもDJとして登場し、二人が素直になる手助けをします!

曲のタイトルは「親愛なる相手 Untitled」と、大切な愛する対象を「彼氏/彼女、夫/妻、父/母」などと限定せず、あえて”Untitled”としています。このことに関して、蔡依林 Jolinは以下コメントをしています。

「Untitled親愛的對象」で伝えたい事は、相手は家族や友達、恋人やペットでも愛の定義がどうであれ、二人がお互いに安心感があることをはっきり分かっていれば、それは愛だという事です。

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また、2023年6月の「THE FIRST TAKE」に登場した際、蔡依林 Jolinはこちらの歌を歌いました。

蔡依林 Jolinが発信するLGBTQ+のメッセージ

蔡依林 Jolinは1999年にデビューして以来、今も台湾では有名な歌手です。一番はじめはMTVの歌唱コンクールで一等賞を受賞し、キレのあるダンスやポップな曲風から「台湾の安室奈美恵」と称されることもありました。

そんな彼女は、台湾の歌手の中でも積極的にLGBTQ+など性的マイノリティの心情、立場をテーマとした作品を出していることで知られています。

例えば、2014年に公開された「不一樣又怎樣 We’re All Different, Yet The Same」は、女性同性愛カップルの物語をテーマとし、特にMVでは同性愛カップルが医療現場で直面する難題(家族になれず、家族としての判断や同意ができない)が描かれます。

また、2018年にリリースされた「玫瑰少年(Womxnly)」も、性的マイノリティのために発声する楽曲として有名です。

こちらの曲は、2000年に台湾の中学校で起きた事件「葉永鋕事件」を題材としています。2000年4月に、当時中学3年生であった男子生徒の葉永鋕がいじめを受けて亡くなったという事件です。

彼は仕草が女の子っぽいという理由で同級生から嫌がらせやいじめを受けていました。トイレに行くことも怖がっていたとのことですが、トイレで倒れて亡くなっていることを発見されました。

この事件をきっかけに、台湾ではジェンダー平等に向けた教育の改善、性的マイノリティを尊重する社会風潮の向上という意識が高まります。そして、彼は「玫瑰少年バラの少年)」と呼ばれ、ドキュメンタリー映像や、蔡依林 Jolinの楽曲などが発表されることになりました。

映画『僕と幽霊が家族になった件』でも性的マイノリティへの差別が描かれ、一部いじめに関する描写は本編からカットされましたが、蔡依林 Jolinの楽曲を通して、この映画の「人は皆愛する/愛される権利がある」というメッセージがより強く伝わるのではと感じました。

※ヘッダー画像は公式Facebook「關於我和鬼變成家人的那件事」より


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