楊双子(よう ふたご)作『臺灣漫遊錄』の英訳版「Taiwan Travelogue」(金翎訳)が、2026年5月に英国の文学賞「ブッカー賞」の翻訳書部門「国際ブッカー賞」を受賞。台湾人作家の作品が受賞したのは初めて。
子どもの頃から、台湾の文学作品がもっと世界各国に広がり、台湾の歴史や現在の政治的立場について理解してくれる人が増えるといいなと思い、思春期の頃は文芸翻訳家になることを夢見ていた。なので、今回の受賞の喜ばしいニュースを見て幸せな気持ちになった。
日本では和訳版『台湾漫遊鉄道のふたり』(中央公論新社、2023年4月)が刊行されており、ブッカー賞以外に、2024年に全米図書協会による全米図書賞翻訳部門と日本翻訳大賞を受賞している。
日本に統治されていたころの台湾が舞台であり、当時の台湾美食が多数登場する本作。日本でも多くの方に読んでもらいたい一作。台湾で漫画版や台湾語訳版、ミュージカルの制作も決まっており、かつ日本と台湾の共同ドラマも制作中とのこと。『台湾漫遊鉄道のふたり』の世界観がどんどん広がっていくことに胸が躍る。
ブッカー賞受賞後、Amazon Kindleの文芸作品部門で早速1位になっているのも嬉しい。
繁体中文版『臺灣漫遊錄』の読後感
日本に統治されていた1938年(昭和13年)の台湾で、結婚から逃れたい日本人女性作家と、許嫁が決まっている台湾人女性通訳が台湾縦貫鉄道の旅に出て、台湾の数々の美食を頬張る。
台湾伝統グルメの描写が十種類以上登場し、台湾人の私にとっては故郷の味が恋しくなる悩みがあったが、1930年代の台湾でどのような人たちがどのように食べていたのか、という歴史的な一面も垣間見えて興味深い。
台湾グルメの描写に舌鼓を打つだけでなく、植民地だった台湾において、支配される側と支配する側に隠された対立構造、女性の抑圧、戦争の影などシリアルな描写も含まれる。既得権益を握る側が気づかぬうちに抱いてしまう傲慢さ、という点は現代にも引き継がれる課題だと感じさせられる。
そして、台湾の繁体中文版を読むと、最後には作品に秘められた巧妙な謎に微笑んでしまう。和訳版でその仕掛けをどのように表現しているかは、また和訳版を読んで確認してみたい。
本書で一番好きなフレーズは以下の一文。小説を琥珀に例えることで、歴史の重みから色鮮やかな宝物が作り上げられる過程を想像させられる。
小說是一塊琥珀,凝結真實的往事與虛構的理想。它耐人尋味,美麗無匹。
楊双子『臺灣漫遊錄』
台日共同ドラマ化の予定
ブッカー賞を受賞する少し前に、本作が台湾と日本の共同でドラマ化される嬉しいニュースを見た。
脚本は「虎に翼」などを手掛けた吉田恵里香氏。ドラマ内でどのように1930年代の台湾の景色や服装を再現し、どこまで作中に登場する台湾グルメが登場するのかが気になるところ。
2027年度中の完成を目指しているそうで、非常に楽しみである。
※参考:国際共同制作はどう動き出したのか? 前畑祥子プロデューサーに聞く「台灣漫遊録」ドラマ開発の舞台裏(cinemacafe.net)
【小説「台湾漫遊鉄道のふたり」台日共同でドラマ化】
— Taiwan in Japan 台北駐日経済文化代表処 (@Taiwan_in_Japan) February 24, 2026
24年に全米図書賞の翻訳文学賞を受賞した
台湾の小説家・楊双子さんの小説がドラマ化されます
脚本は「虎に翼」や「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」などを手掛けた吉田恵里香さんが担当されますhttps://t.co/222nlSf6i7
楽しみですね
台湾での漫画化予定
ブッカー賞受賞後、台湾では本作の漫画化が予定されているというニュースもみかけた。
作画は台湾の漫画家兼イラストレーター「星期一回收日」。台湾の漫画界の最高栄誉と称される「金漫獎」などを受賞しており、過去にも楊双子の作品『綺譚花物語』のコミカライズ版を担当。
全部で4話、一話に二つのストーリーが含まれる予定。早くて今年年内から連載開始し、来年から単行本が出版されることを期待したいとのこと。
※参考:臺灣漫遊錄揚威國際 漫畫、音樂劇如火如荼改編中(中央社CNA)
台湾での台湾語版刊行予定
以前から「臺灣漫遊錄の台湾語訳版があると嬉しい」という感想が多く、ブッカー賞受賞後に、Treadsで改めて「台湾語訳版を製作するなら、台湾語詩集『日光閃爍』の作者である温若喬さんに訳してもらえないか」と投稿した方がいた。
その投稿に対して、なんとご本人から「あの……実は……🤭🤫 」と返信があり、これは翻訳がすでに決定していてまだ公表できないということだろう!と話題になった。
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そして昨日、台湾語訳版を制作中というニュースが公となった。完成までまだ時間がかかりそうだが、当時の時代における台湾語を再現するにはきっと時間をかけて丁寧に考証する必要があるだろう。
※参考:臺灣漫遊錄推台文版 台語詩人温若喬擔任翻譯(中央社CNA)
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台湾でのミュージカル版公開予定
台湾では劇団「瘋戲樂工作室 Studio M」によるミュージカル版の制作も進んでいる。早ければ来年の後半、または再来年に公開することを目指すとのこと。
作品の世界観をどう音楽などで表現するのだろうか。機会があれば台湾で観てみたい。
※参考:臺灣漫遊錄改編音樂劇 楊双子期待「美」食場景(中央社CNA)
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