2019年の台湾版エミー賞で6部門受賞した台湾ドラマ『悪との距離(原題:我們與惡的距離)』。映画館で起きた無差別殺人事件を巡り、被害者、加害者、メディア、精神医学など様々な角度から事件を見つめ討論する社会派ドラマである。
ストーリーやコンセプト、各人物の心理描写等、どこを切り取っても素晴らしいドラマで、米インターネット・ムービー・データベース(IMDb)においても9.3点と高い点数を獲得しており、台湾国外においても高い評価を受けている。
今回初めて台湾のドラマを見た私にとって、殺人事件の加害者家族の人権や報道の在り方など、日本にもみられる共通の問題はもちろんのこと、今まであまり知らなかった台湾の様々な夫婦の様子が見ていて面白かった。なんとも俗な話ではあるものの、今回はこのドラマにでてくる女性の中で日本人の私が独断と偏見で選ぶ「素敵な奥さん」というかたちでランキングをつくってみた。なお、事前に妻の了承は得ているので、その点はご留意いただきたい。
『悪との距離』素敵な奥さん第1位:丁美媚(ディン・メイメイ)
私が素敵な奥さん第1位に上げるのは、殺人を犯した犯罪者にも人権はあるという強い信念をもつ弁護士王赦(ワン・シャー)の奥さん、丁美媚(ディン・メイメイ)だ。男女平等が叫ばれる現代において「理想の奥さんは丁美媚です!」といったらかなりのバッシングを受けそうなほど、人権を守るためがむしゃらに働く夫をなんとも献身的に支える。
特に印象的なのが、王赦が弁護した殺人者が無期懲役となった後、王赦だけでなく、妻の丁美媚も誹謗中傷の対象となってしまうシーンである。丁美媚はネットで誹謗中傷を受ける中でも、理想のために必死に働く夫に心配はかけまいと、王赦には何も言わず誹謗中傷に耐え忍ぶのだ。夫としてはつらいことはぜひとも相談してほしいし、一緒に解決したいと思うのだが、王赦を懸命にサポートしようとする丁美媚の健気な姿は見ていて胸が熱くなる。
また、丁美媚の流産のあと、人権弁護士として働いてきた王赦が、家族のためにと裏社会の人の弁護に携わるようになると、「優しいあなたはどこにいったの?」と彼を元の道に正そうとする。
ただ、一歩引いて夫をサポートする彼女は、女性の社会進出が叫ばれる現代の日本よりもやや古い、昭和の日本のドラマなどにでてきそうな理想の奥さんに近い気もする。
また、王赦の義理の母にあたる、丁美媚のお母さんも素敵だ。やや頭がかたい丁美媚の父親をうまくなだめつつ、王赦の信念に理解を示し、丁美媚をそっとサポートする。この母親にしてこの娘ありだろう。「理想の義母ランキング」を作るとしたら丁美媚の母を間違いなく1位にしたい。
『悪との距離』素敵な奥さん第2位:宋喬平(ソン・チャオピン)
先程の丁美媚が、昭和における日本の理想的な奥さん像だとすれば、宋喬平(ソン・チャオピン)の魅力は日本人にはあまりないような台湾女性ならではの表現の豊かさがあげられる。
陽気な林一駿(リン・イージェン)のジョークに様々な表情で反応するだが、口を膨らませたり、やや白目をむいたりとその表情のバリエーションが面白い。妻曰く、台湾の女性の中にはやや白目をむくなどの表情をする人もいたりするらしいのだが、日本の女性はいわゆる「変顔」以外のときで、相手に何かを言われてこういう表情・反応はしない気がする。また、口を膨らませる仕草も、日本ではいわゆるぶりっ子のような反応だが、宋喬平(ソン・チャオピン)の反応はぶりっ子ともまた違う表情なのだ。
また、應思聡(イン・スーツォン)が事務所にやってきた対応も見事だった。相手に遠慮をする事は無く、対等な目線で思聡に語りかける。その後、姉の宋喬安(ソン・チャオアン)との会話の中で「頭もなでてよ!」とふざけるシーンを見ると、芯の強さとユーモアの両方を見ることができる。林一駿(リン・イージェン)にかめはめ波を打っているシーンも素敵だ。
ただ、やはり彼女の一番の武器は、日本人にはないその表情のバリエーションということにしたい。
『悪との距離』素敵な奥さん第3位:應思悦(イン・スーユエ)
台湾では「國民姊姊(国民のお姉さん)」と呼ばれている應思悦(イン・スーユエ)。應思悦も宋喬平と同じくあまり日本にはあまりいないタイプのように思われる。弟である應思聡(イン・スーツォン)をサポートし、困っている李大芝(リー・ダージー)にいつも手を差し伸べる、サバサバした性格ながらも深い思いやりを持った女性だ。
エピソード1の最初のシーンから日本人の私としてはやや不思議で、大家さんであるはずの應思悦が李大芝にお弁当を作ってあげるなど積極的に「おせっかい」をやいているのだ。日本では部屋単位での貸し出しがそもそもあまりないほか、年配の方ならともかく、若い女性が年齢の近い他の女性の生活にここまで入りこむことは無いように思う。いきなり、大家が部屋に入ってきて自分のベッドの上に座られたら嫌な気分になりそうだが、應思悦であれば何とも気にならないから不思議だ。
最後のシーンも印象的で、應思悦はフィアンセと別れた後、お店を手伝いに来た施設の人に「テーブルを拭いて」と指示を出したあと、「夕食を御馳走して」とデートに誘う。これにOKした時点で、この相手の男性は将来妻の尻に敷かれることが確定したようなものだが、なかなかカッコイイ誘い方だ。その前に、バイトの人が「店長は美人だから」と褒め、應思悦が軽くたたく仕草も妻曰く台湾ではよくある仕草らしいのだが、確かに日本ではカップル以外ではあまり見られない光景かもしれない。
終わりに
以上、『悪との距離』という難しい題材を扱ったドラマの中で、敢えて「素敵な奥さん」という俗な切り口をもって独断と偏見でランキングを作成してみた。意外と日本人からみた台湾ドラマの感想・コメントは多くはないので、これからも機会があったら取り上げてみたいと思う。
Q&A
R to Y:GOTのロケ地で一番行きたいところはどこですか?⇒ドブロブニクの聖イグナチオ教会に向かう階段で、サーセイの有名なシーン「shame、shame」を再現したい。
Y to R:『悪との距離』で一番旦那にしたくない男性は?
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