台湾映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』:戒厳令における外省人、本省人

台湾映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』を見て、白色テロや戒厳令のあった台湾の歴史や、実際に起きた事件について深く知ることができた。
ただ、この映画で一番印象的だったのは、外省人も白色テロの取り調べにあっていたことだ。今回は個人的な感想も交えて、『クーリンチェ少年殺人事件』で描かれる外省人グループの格差、外省人の苦悩を推考していきたい。

権力者かつ被支配者でもあった外省人

1949年、国共内戦で国民党が台湾に拠点を移した後の歴史については、二二八事件を皮切りに、戒厳令や白色テロなどにつて学校でも習ったが、「外省人=支配者」「本省人=被支配者」という構図で捉えられることが多い。(二二八事件や、本省人と外省人の違いについては「台湾映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』:時代背景と概要」を参照。)

ただ、この映画の冒頭では、当時の60年代の台湾社会について以下のようにテキストで説明している。

1949年頃、中国から数百万人が国民党政府とともに台湾に渡った。
多くの人は安定した仕事、子供に安定した環境を与えたかっただけだった。

しかし、子供たちは成長過程で、親世代が不確かな未来への不安や恐怖を感じ取り、徒党を組むことで自分たちの脆さや弱さを隠そうとした・・・

映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』冒頭

映画『クーリンチェ少年殺人事件』予告編

この説明から、「外省人」は単一のグループではなく、全員が支配者として君臨したわけではない、必ずしも「外省人=支配者」ではないことが分かる。

1949年以降、多くの外省人が中国大陸から台湾に遷ったが、その中の全員が国民党政府関係者や、軍の関係者であったわけではなく、よりよい仕事、生存環境を求めて台湾に渡っただけの一般人も多かったのだろう。主人公小四一家が、公務員の父親とともに台湾に移民したように。

「小公園幫」と「二一七幫」の対比

このことを裏付けるように、映画内では二つの外省人グループが対照的に描かれている。ハニーや建国中学の学生たちが所属する「小公園グループ」と、山東をリーダーとし、ビリヤード場でたむろする「217グループ」である。

職業(社会的地位)で見ると、小公園グループは建国中学に通う子供が多く、親も公務員や教師など、比較的安定した職業についていると思われる。例えば後からグループに入った小四は父親が公務員で、母親も教師として働いている。また、滑頭は父親の力で中山堂でコンサートを開催しているので、父親もある程度の地位についているはず。

それに対し、217グループは明確に家庭環境が描かれていないが、服装や住んでいる環境を見ると、比較的貧しい階級ではないかと推測される。ボスの山東(シャンドン)の名前を見ると、中国山東省または地方の農民・一般人が国民党軍に入り、台湾に遷ってきたのかなと想像してしまう。

小四と懐中電灯

さらに、小公園を代表する小四が懐中電灯を手に入れ、夜中でも光を照らすことができるのに対し、217グループが住む場所はすぐ停電し、いつも暗い画面が続く印象だ。停電した際もろうそくをつけることが多く、赤いろうそくの火がゆらゆら動き、今にも消えてしまいそうなシーンは、社会的に孤立している外省人子息の前途多難な未来を象徴しているかのようだ。実際に山東ら217グループは、Honeyの敵討ちとして内省人のヤクザに無残に殺され、彼らの弱小さがより一層際立ってしまった。

山東(シャンドン)と恋人の神経(クレージー)

白色テロ下の外省人

一方、経済的、社会的に比較的恵まれた「小公園グループ」でも、小四と父親に代表されるように、白色テロに直面して理想が擦り減っていくことが描かれる。特に私が衝撃的だったのは、理想や夢に溢れていた父親が、上司の汚職に協力しなかったため、陥れられて捕まり、拷問に近い尋問にあってしまったことだ。(詳細は「台湾映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』:小四が尊敬した「父親」と「ハニー」」を参照)

私は白色テロの被害者は本省人が多いイメージだったので、外省人である小四の父親が捕まった時、白色テロにあっているのか、何が起きたのかが分からなかった。ただ、調べると外省人でも白色テロの被害者になっていた人が多いという。人口比でいうと、外省人の被害者の方が、本省人よりも割合的に多かったとも言われる。この映画をきっかけに、小四の父親のように、外省人が全員支配側ではなく、支配される側、被害者側にもなり得ることについて考えさせられた。

小四の父親が目撃した、氷の上に座らされ尋問される光景

また、映画の後半で、小四の姉が家計を心配してアメリカ留学を断念したり、小四の母親が雑貨屋でツケでお米を買ったり、経済的に不安を抱えている場面が見られる。特に母親が雑貨屋の本省人オーナー林さんと話し、青果輸出の事業で雇ってもらうことを父親に提案する場面では、外省人一家が台湾に居残る決意をし、本省人の下で働くこと、本省人が優位性を持っていることが暗示されている。

雑貨屋のオーナーと小四の母親

監督エドワード・ヤンはインタビューの際に、実際の事件や犯行動機に焦点を当てるのではなく、当時の時代背景で抑圧された心情を描きたかったと語っている。幼少期に台湾に遷り、いわゆる外省人として育ち、建国中学にも通ったエドワード・ヤン監督の映画は、台湾社会のメス(台灣社會的手術刀)と言われているが、本作でも「外省人も本省人も同じように苦労をしていた、権力の前では同じく無力だったのだ」ということを、鋭く観客に見せつけてきたのである。

Q&A

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