少し前にNetflixで話題の台湾ドラマ『次の被害者』(誰是被害者)を見ました。Netflixによると、本作は2020年に海外で最も見られた台湾の作品の一つ(※)。大好評につきシーズン2も制作されており、2022年に公開予定とのことです。
※出所:今年海外で最も見られた台湾ドラマは「次の被害者」=ネットフリックス | 中央社フォーカス台湾
連続殺人事件の謎を解くために、アスペルガー症候群の鑑識官が記者と協力して事件を解決していく話ですが、被害者の死体や事件現場がリアルに再現されており、時々グロテスクな場面も登場します。最後まで見ると、殺人事件の謎が解き明かされる爽快感はもちろん、主人公の不器用な家族愛にも深く感動しました。
- 1 『次の被害者』のあらすじ
- 2 『次の被害者』の登場人物 / キャスト
- 2.1 方毅任(ファン・イーレン)/ 演:張孝全(ジョセフ・チャン)
- 2.2 徐海茵(シュー・ハイイン)/ 演:許瑋甯(シュー・ウェイニン)
- 2.3 趙承寬(チャオ・チョンクワン)/ 演:王識賢(ワン・シーシェン)
- 2.4 江曉孟(ジャン・シャオモン)/ 演:李沐(ムーン・リー)
- 2.5 游誠皓(ヨウ・チョンハオ)/ 演:黃河(リヴァー・フアン)
- 2.6 蘇可芸(スー・コーユン)/ 演:丁寧(ディン・ニン)
- 2.7 張聰健(チャン・ツォンジエン)/ 演:陳家逵(チェン・ジアクウェイ)
- 2.8 莊秉榮(ジュアン・ビンロン)と莊秉耀(ジュアン・ビンヤオ)/ 演:鄭人碩(チョン・レンシュオ)
- 2.9 劉光勇(リウ・グアンヨン)/ 演:夏靖庭(シャー・ジンティン)
- 2.10 李雅均(リー・ヤージュン)/ 演:林心如(ルビー・リン)
- 3 『次の被害者』感想と見どころ
『次の被害者』のあらすじ
アスペルガー症候群の鑑識官・方毅任(ファン・イーレン)は、ある非道的な殺人現場で、長年疎遠だった娘の江曉孟(ジャン・シャオモン)と関わる証拠物をみつけてしまう。
彼は警察当局や同僚にその事実を隠し、鑑識の知識を活用して、同じく事件の真相を追う記者の徐海茵(シュー・ハイイン)と手を組み独自に捜査を進める。
『次の被害者』の登場人物 / キャスト
※画像はNetflix Taiwanの公式Instagram、制作会社の公式Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より引用
方毅任(ファン・イーレン)/ 演:張孝全(ジョセフ・チャン)
平霖市警察局刑事鑑識センターの鑑識官|男性|44歳
アスペルガー症候群の鑑識官。観察力と集中力が抜群で、証拠物の分析が得意。鑑識の専門知識や仕事の能力が高く、まわりから能力を認められるも、人付き合いが悪く少し煙たがられる。
新たな殺人事件の調査を進めている際に、長年疎遠になっている娘との関わりを見つけ、悩んだ末、証拠物の隠蔽をしてしまう。ただ、普段と変わった行動が刑事隊長に気づかれてしまい…。
徐海茵(シュー・ハイイン)/ 演:許瑋甯(シュー・ウェイニン)
新聞社社会部の記者|女性|35歳
新時報(新聞社)の敏腕記者。人間関係には淡泊で、センセーショナルなニュースをメインに扱い、スクープを入手するためには手段を選ばない。
本当に心を通わせられる友人がおらず、プライベートでは孤独を感じることも、幼少期に起きた悲劇で苦しむこともあるが、その一面もうまく隠せている。
趙承寬(チャオ・チョンクワン)/ 演:王識賢(ワン・シーシェン)
平霖市警察局刑事隊長|男性|53歳
短気で気性が荒く、熱血派の刑事。悪を深く憎しみ、法律で裁けない犯人に対しては、私刑で制裁することも厭わない。
犯人を必死に追いかけるが、犯行の動機や、なぜ犯人になってしまったのかをあまり考えたことがなかった。
江曉孟(ジャン・シャオモン)/ 演:李沐(ムーン・リー)
キャバクラ嬢|女性|17歳
母親が重病で入院し、医療費や生活費を稼ぐために夜の店で働く。厭世的で生きる希望や喜びを持っていない様子。
実は鑑識官・方毅任(ファン・イーレン)の娘で、過去の確執から疎遠になっている。
游誠皓(ヨウ・チョンハオ)/ 演:黃河(リヴァー・フアン)
キャバクラボーイ|男性|21歳
保守的な家庭環境で厳しく育てられる。よく父親に殴られ叱られ、我慢できなくなったため家出をし、キャバクラで働き生計を立てる。
蘇可芸(スー・コーユン)/ 演:丁寧(ディン・ニン)
過去の人気歌手|女性|43歳
過去に人気で、そのことで誇りを持っている歌手。知名度が下がったことでストレスを感じ、薬物やアルコール中毒になり憔悴する。
張聰健(チャン・ツォンジエン)/ 演:陳家逵(チェン・ジアクウェイ)
不動産会社の営業|男性|42歳
温厚で愚直な性格。年寄りの父親に良い暮らしをしてもらえるよう、必死にブラック企業で働くが、激務で体が持たなくなる。
莊秉榮(ジュアン・ビンロン)と莊秉耀(ジュアン・ビンヤオ)/ 演:鄭人碩(チョン・レンシュオ)
【兄】莊秉榮(ジュアン・ビンロン):木彫刻芸術家|男性|35歳
芸術的な才能を持ち、多くの木彫刻の作品を制作するが、あまり世に知られない。
【弟】莊秉耀(ジュアン・ビンヤオ):有名芸術家|男性|35歳
芸術の才能がないことにコンプレックスを持ち、天才である兄の芸術作品を売ることを商売とするが、実はある秘密を抱えていた。
劉光勇(リウ・グアンヨン)/ 演:夏靖庭(シャー・ジンティン)
臨時雇い|男性|56歳
少年時代に誘拐殺人事件に手を染めた。少年院で長年過ごした後、更生して社会復帰するが、日雇いなどの仕事で稼いでいる。過去に犯した罪からの罪悪感を忘れられない。
李雅均(リー・ヤージュン)/ 演:林心如(ルビー・リン)
病院の清掃員|女性|43歳
インドネシアから台湾へ移り、病院で清掃員として働く。違法で定員を超える患者を受け入れ、劣悪な環境で過ごす患者に同情するものの、何もすることができず心が荒んでいく。
『次の被害者』感想と見どころ
※ここからネタバレが含まれますので、ご注意ください!
特徴的な人物造形と迫真の演技
本作の主人公・アスペルガー症候群の天才鑑識官を演じるのは台湾の名役者張孝全(ジョセフ・チャン)。同じ話を繰り返したり、他人に忖度せず事実を素直に話したり、まばたきや眼鏡を触る仕草を繰り返すなど、アスペルガー症候群の特徴をうまく表現しています。超人的な数字の記憶力と洞察力を持つ設定も、彼の人物造形を際立たせています。
最終話で娘と崖の上で向かい合い、娘との大切な出来事とそれが起きた日付をたくさん暗記していたと分かる場面では、アスペルガー症候群ゆえ愛情表現が苦手だが、本当は娘のことを一番に愛していたことが切実に伝わってきました。このドラマで一番好きなシーンで、涙なしには見られないクライマックスでした。
張孝全(ジョセフ・チャン)の本作における演技は海外でも評価され、釜山国際映画祭の「アジアコンテンツアワード」で最優秀男優賞を受賞しました。思い返しただけでまた涙が出そうなくらい、私の記憶に残る渾身の演技でした。
なお、主演の張孝全(ジョセフ・チャン)を含め、女性記者役の許瑋甯(シュー・ウェイニン)や、刑事役の役者など、主要俳優陣は、より自然な演技ができるよう、それぞれ本物の鑑識官、刑事、記者にヒアリングしたといわれています。
ちなみに、個人的に驚いたのは、天才芸術家の兄と彼を利用する弟は、実は同じ役者・鄭人碩(チョン・レンシュオ)が一人二役を演じていたことです。ドラマを見ている時は全く気が付きませんでした。
リアルでグロテスクな事件現場
第1話で溶解された死体の場面が出てきますが、その後も焼死体など、見るに堪えない事件現場が登場します。グロテスクな場面はすべてドラマ制作チームが色や状態などを細部までこだわり作ったもので、スタッフや女優の許瑋甯(シュー・ウェイニン)も吐き気を感じたといわれています。
画面越しに見てもインパクトがあり、食欲を無くしそうでした。ごはんを食べながら見るのはお勧めしません。。
なお、第1話で描かれる死体溶解殺人事件は、1998年に台湾で実際に起きた事件をモチーフにしており、実際の事件を踏まえて制作もされたとのことです。
LGBTQ、ブラック企業、違法の介護現場などの社会問題を考察
本作で起きた連続殺人事件を紐解くと、LGBTQへの差別、ブラック企業の過労死、利益優先ゆえの過酷な介護現場など、日本にも通じる現代の社会問題に繋がります。各話で登場する事件の関係者や犠牲者は、自信や名声、愛情や安らぎを求めるものの、社会や家族に自分のことを認められず、苦しんだ末、事件の首謀者に感化(洗脳?)されて自殺してしまいます。
もちろん、一連の事件の首謀者が、温かみのない社会や職場に失望して、他人に自殺を唆したのは許せないことだし、彼女の歪んだ理念は理解しがたいものでしたが、このドラマを通して、「生きることとは?」について改めて考えることができました。
最終話で、記者の徐海茵(シュー・ハイイン)が李雅均(リー・ヤージュン)に語った「『生きる』ことは『死ぬ』ことよりも難しい」という言葉が、このドラマの一番重要なメッセージを表していると思います。
振り返ると、アスペルガー症候群の主人公や、一家心中を経験した記者の徐海茵をはじめ、すべての登場人物が必死に泥臭く生きていますが、恰好悪くてもそれでよい、生きているだけでよい、という彼女の強い意志を感じました。
犯罪サスペンス、推理小説が好きな方も、感動的なヒューマンドラマが好きな方にもおすすめの作品でした。シーズン2の放送が待ち遠しいです。
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