『僕と幽霊が家族になった件』(原題:關於我和鬼變成家人的那件事、英語題名:Marry My Dead Body)は、2023年2月から台湾で上映されて大ヒットした台湾映画。9日間で興行成績1億台湾ドルを達成し、今までの台湾映画で一番早く1億を超えた映画になります。日本やグローバルのNetflixでも8/10から見れるようになって本当に嬉しいです。
異性愛の男性警官が、冥婚で同性愛の亡くなった男性と結婚することになり、彼の事故の真相を追っていくうちに、大きな事件にも繋がっていく……というストーリー。
紅包(赤い封筒)を拾ってしまうと、亡くなった人と冥婚することになるという台湾の民間風習をモチーフにしたオカルト要素、警察が事件捜査をする犯罪サスペンス要素をコミカルに表現しつつ、感動的なシーンもあり、笑いあり涙ありの一作でした。
さらには同性婚、LGBTQ+、ジェンダー平等、環境問題などの社会課題も提起し、異なる価値観の対話と相互理解について考えさせられました。
台湾人目線で、面白かった小ネタやトリビアを紹介したいと思います。まずは台湾の民間風習について書きました。
『僕と幽霊が家族になった件』のあらすじ
ノンケ(異性愛者)の警察官 呉明翰(ウー・ミンハン)は、紅包(赤いご祝儀袋)を拾ってしまったため、ひき逃げ事故に遭って亡くなった同性愛者の青年 毛邦羽(マオ・バンユー)との冥婚を強いられることに。
呉明翰(ウー・ミンハン)は同性の幽霊と結婚したことに困惑しつつも、ひき逃げ事故の真犯人を追うが、やがて大きな事件に繋がっていく。
▼予告
『僕と幽霊が家族になった件』台湾の風習
一部ネタバレがあるのでご留意ください!
台湾の風習「冥婚」
冥婚(めいこん)というのは、生者と死者が行う結婚のこと。中国や他の国で昔から伝わる風習で、台湾では道端に落ちている「紅包」(ㄏㄨㄥˊ ㄅㄠ / hóng bāo)という赤いご祝儀袋を拾うと冥婚に繋がり、冥婚すると運気などが上がり、逆に拒否すると不幸になってしまうという説があります。
私も幼少期から親には「道端に落ちている紅包は絶対拾うな」と厳しく言われ、冥婚の話は教えられていました。風習や都市伝説として台湾では知られていますが、具体的に「紅包」を拾ったら「冥婚」として何か始まるのか、どのような儀式になるのかは、見たことがないので知らなかったです。
なので、この映画を見て「冥婚の紅包には髪の毛や顔写真が入っている」「儀式は夜中に行う」など、儀式の雰囲気を見ることができたのは台湾人としても興味深かったです。特に、オカルト要素もありつつ、コミカルに描かれていたのが面白かったです。
【参考】「冥婚」については、以下の日本語記事で詳しく説明されています。
SNSでバズった「冥婚」 台湾の伝統的風習のホントのところ|Yahoo!ニュース
お供え物としての紙紮(しさつ)
冥婚の儀式が終わった後、毛毛(マオマオ)の祖母や親戚たちが沢山のお供え物を夫 明翰(ミンハン)の家に持ち込みます。持ち込んだものは、紙で作られた家や犬、そして毛毛(マオマオ)を表す紙人形もあります。
台湾では、故人があの世でも豊かな暮らしを過ごせるよう、紙で作った大きなおうち、車、お金などを用意し、燃やして故人に贈るという風習があります。近年では、紙で作ったiPhoneやiPadなどの電子機器、化粧品セット、筋トレグッズセットなど、現代的な新商品もあるとニュースで読んだこともあります。
本作でも、家などの基本的なもの以外に、SK-Ⅲの化粧品セット、Nikomのカメラセット(ブランド名…!)など、現代に即した紙細工が用意されていて、面白いなと思いました。冥婚したので、燃やさずに全部夫側の家に持ち込むんだなと思いながら見ていました。
余談ですが、以前の記事でも書いた通り、台湾映画『同級生マイナス』で劉冠廷(リウ・グァンティン)が演じた閉結が、まさにこの紙紮(しさつ)を作っている方です。ちなみに劉冠廷(リウ・グァンティン)は今回の映画『僕と幽霊が家族になった件』の名場面に出演していますね。
ポエ占い
台湾映画・台湾ドラマによく登場するので、ご存じの方も多いかもしれませんが、道教や民間信仰としての占い「ポエ占い」(擲筊)が二回登場しました。
一回目は冥婚の儀式で、毛毛(マオマオ)が本当に結婚したいかどうか意志を確認するシーン。二回目は明翰(ミンハン)が廟の道士に離婚できないか頼むシーンで、改めて神様の意向を確認するシーンです。
ポエ占いは、赤い半月の形をした「ポエ」という道具を投げて、ポエの向きで神様に是非を問う占いです。本作のように、神様だけではなく、故人などの意向を確認する時にも行います。ただこの映画のような思わぬハプニングもあるとは……(苦笑)
Netflixで他に見れる台湾映画や台湾ドラマ『返校』『縄の呪い2』と、今TverやAmazon Prime Videoで配信中の『R.I.P. 霊異街11号』など、台湾の道教、民間信仰と深く関連する作品はもちろん、日常的なシーンとしても描かれることが多いと思います。
ポエ占いについて、詳しくは以前書いた記事をご参考ください。
まとめ:台湾の民間風習をユーモア交えて描いている
以上、台湾映画『僕と幽霊が家族になった件』に登場した台湾の民間信仰や風習のうち、「冥婚」「紙紮(しさつ)」「ポエ占い」についてまとめました。台湾人としても「冥婚」は聞いたことがあるが、実際の映像で見るのは初めてなので興味深いです。
特に冥婚や葬儀などのシーンは、タブーとして詳細を知らなかったり、ちょっと怖いかなと想像していた部分もありましたが、ホラーの要素はほぼなく、本当にユーモア感たっぷりと描かれていたので、安心して見れました。
※ヘッダー画像は公式Facebook「關於我和鬼變成家人的那件事」より
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