『返校』(Detention)ドラマ版のあらすじ、時代背景と登場人物紹介

台湾ドラマ『返校』(Detention)は、同名のホラーゲームに基づく作品で、他にも映画版がすでに公開されている。はじめは赤燭遊戲(Red Candle Games)が台湾歴史上の出来事「白色テロ」を題材に、2017年に開発したゲームだが、テーマの斬新さなどから大ブームとなり、2019年には映画が公開され、ドラマ版は2020年12月5日から台湾テレビ局「公視」と、グローバル各国のNetflixで公開予定だ。

以前台湾映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』を見た時から、台湾の白色テロの歴史についてもっと知りたかったので、ドラマ版『返校』の公開をずっと心待ちにしていた。では早速、ドラマ版『返校』が描く時代背景、あらすじや登場人物について見ていこう。

『返校』のあらすじ

時は抑圧された60年代の台湾。翠華高校では、教師や生徒らが読書会を開いたことで逮捕され、その後女学生・方芮欣も校舎から飛び降りて亡くなる。以降、学校内では心霊現象が絶えず、供養会や鎮魂儀式を開いて収めようとした。

30年後、90年代の翠華高校は相変わらず封建的な学風を守っていた。ある日、転校生の劉芸香が立ち入り禁止の校舎内敷地に誤って入ってしまうと、封印された怨霊に出会ってしまう。そして、昔学校で起きた悲劇の真相も徐々に明らかになっていく。

『返校』の時代背景:「白色テロ」とは

ゲーム版、映画版、ドラマ版『返校』は、登場人物や設定が少し異なるものの、台湾歴史上の出来事「白色テロ」を背景にしている点では共通している。

「白色テロ」は権力者・為政者が反政府の勢力や革命運動に対して、言論統制、不当逮捕などの弾圧を行うこと。18世紀のフランス革命の際、フランス王権の象徴であった「白百合」から由来する。台湾では国共内戦の流れを受けて、反政府勢力に対する弾圧が行われ、「白色テロ」の期間は1947年の二・二八事件から1987年に戒厳令が解除されるまでに渡る。(※二・二八事件、戒厳令、白色テロの詳細はこちらを参照)

戒厳令が解除された後、1989年の映画『悲情城市』を皮切りに、1991年の映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』など、多くの映画や作品で白色テロについて取り上げられてきた。そして数十年過ぎた今、再び白色テロを題材としたゲーム・映画・ドラマ『返校』が注目を浴びているのだ。

『返校』(Detention)タイトルの意味

『返校』は漢字から推測できる通り「学校に戻る」という意味だ。台湾の学校(小中高)では、夏休みや冬休みなどの長期休暇が明ける直前に、1日くらい学校に戻り、簡単な掃除や連絡事項を聞く文化があり、その日のことを「返校日」と呼ぶ。(もちろん子供の頃は「返校日」が大っ嫌いだった、笑)

また、英語のタイトル”Detention”は放課後の居残り、拘束、監禁の意味を指す。白色テロの出来事を彷彿とさせるタイトルだ。

『返校』の登場人物 / キャスト

※写真や内容はすべて公式Facebook「返校 Detention 影集」を参照・引用

先輩「方芮欣」(ファン・ルイシン)/ 韓寧(ハン・ニン)

「30年間、ずっとこの時を待っていた…」

60年代、翠華高校の優等生。読書会事件で自殺した。30年間苦しみに封印され、記憶が徐々に歪んでいく。怨霊となりキャンパス内彷徨いつつ、乗り移る対象を探す中、転校生の劉芸香に出会ってしまう…

後輩「劉芸香」(リウ・ユンシアン)/ 李玲葦(リー・リンウェイ)

「もし私に才能が無かったら、誰にも気にかけてもらえないのかな?」

90年代、翠華高校の転校生。母親と大都会から地方の金鸞郷まで引っ越した。不健全な家庭関係のせいで自己肯定感が低いためか、偶然怨霊・方芮欣に出会うと、徐々に依存関係になってしまう。方先輩の協力の元、詩歌部(文芸部)の先生・沈華に認められる。

教官「白國峰」(バイ・グオフォン)/ 趙正平(ジャオ・ジョンピン)

「お前たちがやっていることはすべて見通しだ。隠せると思うな!」

元陸軍中佐、翠華高校へ教官として転任し、30年間教官を務める。学校を反共産主義の基地と見なし、必ずいつか戦場に戻れると堅く信じる。学校内でも軍隊さながらの厳格さで教師や生徒たちを管理する。

※台湾の中学・高校などでは、軍人の「教官」が駐在する習慣があった。

教師「沈華」(シェン・ホワ)/ 姚淳耀(ヤオ・チュンヤオ)

「大人たちに競争、順位で縛られるな!」

校長・沈敬の一人息子、理想や熱意を抱くも、厳しい父親に育てられたため、弱い内面を持つ。海外留学から帰国後、翠華高校で詩歌部(文芸部)の顧問となる。学生たちから愛され、学校の保守的・封建的なルールも改革しようと奮闘するが…

医者家庭の息子「魏仲廷」(ウェイ・チョンティン)/ 吳昆達(ウー・クンダー)

「ここで言うな、彼らはまだいる…」

医者家庭の一人息子。60年代に読書会事件で投獄され、15年間の苦労の末心身ともに衰退する。出獄後、家族も家も無くなり、廃病院に閉じ込められたトラウマに苦しめられ、再び監視、迫害されることを日々恐れる。

名廟の五代目「程文亮」(チョン・ウェンリアン)/ 黃冠智(ホアン・グアンジー)

「お金が貯まったら、ここを出てやるぞ」

程家の長男、金鸞城隍廟(台湾の道教系の廟、仏教でいうお寺)の五代目。家業を継ぐ責任を抱えるが、卒業したら田舎を離れ、大都会で暮らすことを夢見る。都会から引っ越してきた劉芸香と知り合い、興味を示す。

学級委員「蘇婕妤」/ 蔡瑞雪(ツァイ・ルイシュエ)

「これは私の職務、言わないといけないことがあるの」

二年忠組の学級委員、学業品性共に優良な優等生だったが、劉芸香と程文亮と一緒に涵翠楼(校舎内のビル)に入り込み、一連の事件の中で正義感や学級委員の責任感で苦しむ。

教師「張明暉」(チャン・ミンホイ)/ 夏騰宏(シア・タンホン)

「文字は、あなたをもっと自由で広い世界まで連れて行ってくれる」

60年代の翠華高校の教師。文学への熱意から方芮欣と意気投合するが、読書会事件で命を落としてしまったため、方芮欣に多大なる影響を与えてしまう。

「劉母」/ 鄭家榆(ジョン・ジアユー)

「あなたは私の娘。他人があなたをどう見るかは=私をどう見るかだ」

劉芸香の母親、保守的で、旧時代のしきたりを守る女性、抜け殻のようになった家庭を必死に守る。劉芸香に一番プレッシャーを与えている人物。

校長「沈敬」/ 羅光旭(ルオ・グアンシー)

「翠華高校は永遠に変わらない!」

見た目は優しい紳士だが、実は計算高い人。30年前に翠華高校で主任を務めた際に、権力を得るために読者会事件を利用し、うまく昇進することができた。今や翠華高校の理事長兼校長だ。

教師「殷翠涵」(イン・ツイハン)/ 房思瑜(セレナ・ファン)

「些細なことであなたの将来を揺るがさないで」

60年代の翠華高校の殷校長の娘、方芮欣が所属した三年忠組の担任でもあった。学校内で教師と読書会を開くも、誤解により悲劇が起きてしまう。


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