台湾ドラマ『返校』では、白色テロの歴史要素や心霊ホラー要素に加えて、民間信仰や道教など、台湾文化の特徴が多く登場します。前回の記事では、地縛霊となった先輩方芮欣（ファン・ルイシン）や降霊術「筆仙」について紹介しました。今回は程文亮（チョン・ウェンリアン）一家が営む寺廟「城隍廟」を中心に、台湾民間信仰における鎮魂儀式や擲筊（ポエ占い）について紹介します。
※ネタバレを含むのでご注意ください！
城隍廟（神様「城隍」の廟所）
- 台湾華語（中国語）単語：城隍廟
- 発音：ㄔㄥˊ ㄏㄨㄤˊ ㄇㄧㄠˋ｜chéng huáng miào
- 日本語訳：中華圏の民間信仰・道教の神様「城隍」を祀る廟所
主人公劉芸香（リウ・ユンシアン）を暖かく守る程文亮（チョン・ウェンリアン）は、地元の由緒ある「城隍廟」の五代目後継者。「城隍廟」というのは、道教系の神様「城隍」を祀る廟所で、「城隍」は土地の守護神と冥界の司法官としての役割を担うので、管轄地域の人々を守り、勧善懲悪や幽霊の審判なども行います。（※城隍の詳しい役割や由来はこちらの記事をご参照）
程文亮（チョン・ウェンリアン）は家業を継ぐことに興味なかったが、劉芸香（リウ・ユンシアン）が方先輩の霊に憑りつかれた後は、お祓い用のお札を書いたり、占いやお参りをして彼女を守ろうとしました。彼の健気な姿に心を奪われた女性は多いのではないでしょうか（笑）。その光景を見た両親も喜んでいたのが微笑ましい。
鎮靈法會（道教の鎮魂儀式）
- 台湾華語（中国語）単語：鎮靈法會
- 発音：ㄓㄣˋ ㄌㄧㄥˊ ㄈㄚˇ ㄏㄨㄟˋ｜zhèn líng fǎ huì
- 日本語訳：中華圏の民間信仰・道教で行う鎮魂儀式
ドラマ第2話では、翠華高校に宿る幽霊・方芮欣（ファン・ルイシン）の怨念を退治させるために、城隍廟を管理する程文亮（チョン・ウェンリアン）のお父さんが道教系の鎮魂儀式を行うシーンがある。中国語だと漢字の通り「怨霊」を「鎮める」儀式＝「鎮靈法會」と呼びます。
「城隍」の項目で少し紹介した通り、城隍は死後の幽霊を冥府へ連れて審判をかける役割を担うため、鎮魂儀式で城隍廟の当主である程文亮の父親が呼ばれました。
ドラマの動画（下記動画00:13より）を見ると、道士の服装を着用し、道教の様々な道具（太極図、お札など）を用意し、道教系の楽器で音楽を鳴らして呪文を台湾語で唱えています。私は実際に鎮魂儀式を見たことないが、台湾でのお中元やお葬式などで道教系の儀式が行われる時も、このような音楽や雰囲気で進められていました。
擲筊（ポエ占い）
- 台湾語単語：擲筊（または跋杯）
- 台湾語発音：pua̍h-pue
- 日本語訳：ポエ占い（中華圏・道教系の民間占い）
最後に台湾語の単語を一つ。劉芸香（リウ・ユンシアン）が方芮欣（ファン・ルイシン）に憑りつかれた後、程文亮（チョン・ウェンリアン）は神様の城隍に占いをし、彼女の安否を確認します。その際の占い方法は、台湾民間や道教系の寺廟でもポピュラーな「擲筊」といい、意味は「筊（ポエ）を投げる」、発音は台湾語で「pua̍h-pue」と読みます。
Wikipediaの解説はこちら。
ポエ占いは中国の民間占いのひとつ。二枚貝を割ってできた形に見える2つの堅い石（各石は一面が丸く膨らみ他面が平らで、一側が丸く他側が直線）を床に投げて落ちた4つの状態のひとつで、自分の行こうとしている方向が正しいか、間違っているかを占うというもの。
Wikipedia「ポエ占い」
この貝のような石を、台湾語の発音で「ポエ」（漢字だと「杯」）と呼ぶ。占いをする際はポエを手に持ち、自分の名前、年齢、住所と聞きたいことを神様に述べます。通常三回まで「ポエ」を投げることができ、「ポエ」の向きによって神様の回答が異なります。
- 聖筊（siūnn/sīn-pue）：片方は丸い面、もう片方は平たい面が上を向く。「願いは叶う」「良い」「Yes」などのポジティブな答え。
- 陰筊（im-pue）：両方とも丸い面が上を向く。「いいえ」「良くない」「No」などの答え。神様が怒っているか、認めないことを表す。
- 笑筊（tshiò-pue）：両方とも平たい面が上を向く。神様が笑い答えないことを示す。質問の内容がはっきりせず、回答が出ない可能性があるので、改めて質問を詳しく述べると良い。もしくは、すでに自分の心の中に答えがある場合も「笑筊」が出やすい。
ブログの更新情報をメールでお知らせします。
ぜひご登録ください！
