『我、邪で邪を制す』(原題:周處除三害、英語題名:The Pig, The Snake and The Pigeon)は2023年に公開された台湾クライムアクション映画。2024年3月1日からNetflixでグローバル配信開始。
台湾で3番目の最重要指名手配犯であることを知ったギャングの主人公が、1番目と2番目の悪人を取り除き、名を世間に轟かせようとする話。暴力的な演出が多くも、アクションが思いのほか迫真的だと思った。
中国語の原題「周處除三害」の意味と、英語の題名”The Pig, The Snake and The Pigeon“が象徴するもの、登場人物との関連性について紹介したい。
『我、邪で邪を制す』のあらすじ
指名手配犯として身を隠していた主人公の陳桂林は、自分が台湾の最重要指名手配犯の3番目であることを知る。1番目と2番目の凶悪な指名手配犯を成敗して、世の中で一番有名な人物になろうとし、陳桂林は他の二人の居場所を探し始める……。
▼予告
※以下ネタバレがありますのでご注意ください!
中国語の題名『周處除三害』の意味
原題の『周處除三害』は中国の古典が出所。
周處(周処)とは中国三国時代から西晋の武将。乱暴者で欲望の向くままに行動する人で、郷里の人々に恐れらる存在であった。
ある日、周處は郷里の人になぜ皆が喜んでいないかと聞くと、人々は「三害」を恐れているので安心して暮らせない、「三害」とは「南山の白額虎、長橋の蛟龍、そして『周處』」の三つであると告げられる。
そこで周處は、南山の白額虎、長橋の蛟龍と戦って始末した。周處が戻ってこないため、戦いで死んだと勘違いした郷里の人々はひどく喜び、それを知った周處は、自分がどれほど郷里の人々から嫌われ恐れられているかを改めて知り、自分の過ちを改めようとし、勉学に励み、義理人情を守るよう生まれ変わった。
このように、改心したことで、元々の乱暴者で皆から恐れられた周處と言う人物も無くなり、「三害」の最後の「害」も取り除かれたのだ。
今回の映画では、主人公の陳桂林が、自分は台湾での重要指名手配犯の3番目であることを知り、1番目と2番目の凶悪犯を成敗することで、自分が一番強い存在になりたいと考える。
一方、「自分が3番目の指名手配犯なんて許せない、他の二人をやっつけてやる」「自分が一番強く、一番有名な人になりたい」という自己顕示の気持ちだけでなく、「今まで沢山悪いことをしてきたので、他の悪人を退治することで、自分が改心して生まれ変わりたい」という周處のような正義感、後悔の気持ちも込められているだろう。
結果として、暴力に暴力を重ねて他の「二害」を退治しようとするが、その過程が日本語の題名「邪で邪を制す」でよく説明されている。
英語の題名”The Pig, The Snake and The Pigeon“の意味
英語の題名は「豚、蛇、鳩」と三種類の動物が並んでいるが、それぞれ映画内の「三害」、すなわち三大重要指名手配犯である「陳桂林、香港仔、林祿和」を象徴しているという。
「豚、蛇、鳩」は仏教においての「三毒」を表す。「三毒」とは「貪・瞋・癡(とん・じん・ち)」で、仏教における最も根本的な三つの煩悩のことで、それぞれ「豚、蛇、鳩」に該当する。
作中においては、3大指名手配犯がそれぞれ「豚、蛇、鳩」と関連する入れ墨を入れたり、持ち物を持っていたりと、「三毒」との関連性を表している。
- 貪(とん):貪欲、欲望
- 象徴する動物は「鳩」
※台湾では「鳩」だが、日本語で調べると「鶏」の説もある- 作中では1番目の「林祿和」
背中に鳩の入れ墨がある。宗教で他人の財産を騙し取ることから「貪欲」を表す- 瞋(ちん):憎悪、怒りの心
- 象徴する動物は「蛇」
- 作中では2番目の「香港仔」
腕に蛇の入れ墨がある。怒りっぽく暴力的な性格から「憎悪」を表す- 痴(ち):愚癡、無知の心
- 象徴する動物は「豚」
- 作中では3番目の「陳桂林」
豚の絵柄の腕時計を所持する。他の「二害」を取り除くことで世間からヒーローと見なされると思ったことや、一度邪教にはまりそうになることから「愚痴」を表す
この三人の重要指名手配犯は、実はそれぞれ実在する人物がモデルとなっているという。実在のモデルについてはまた次回の記事で紹介しよう。
主役の陳桂林を演じる阮經天(イーサン・ルァン)のアグレッシブなギャング感が気に入った方は、ぜひ2010年の台湾映画『モンガに散る』(原題:艋舺)も見てほしい。若き阮經天(イーサン・ルァン)が演じるギャングの青春、友情と背後に隠された複雑な感情が印象的な一作だ。
※ヘッダー画像は公式Facebook「周處除三害」より引用しました
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