『次の被害者2』親子たちが生み出す悲劇と関係修復について【登場人物、主題歌、感想】

台湾の犯罪サスペンスドラマ『次の被害者』(原題『誰是被害者』、英語タイトル“The Victims’ Game”)のシーズン2が2024年6月21日からついにNetflixでグローバル配信開始。

シーズン2は前シーズンに引き続き、張孝全(ジョセフ・チャン)、許瑋甯(シュー・ウェイニン)、李沐(ムーン・リー)、王識賢(ワン・シーシェン)らが主演を務める。また、11年ぶりに俳優復帰した台湾の歌手 蘇慧倫(ターシー・スー)、日本の俳優 ディーン・フジオカ、香港の俳優 劉俊謙(ラウ・チュンヒム)ら、海外からの出演者も加わる。

シーズン2を見終わった感想として、シーズン1のインパクトが強すぎたため、それを超えることが難しいと感じたが、シーズン2でも「次の被害者が出るのを防がないと」という緊迫感と親子たちの関係破滅から修復を目指す過程が個人的には心に響き、主題歌や挿入歌のメロディーと歌詞も内容にぴったりのものだった。

目次

『次の被害者2』のあらすじ

元鑑識官である方毅任(ファン・イーレン)は、娘の江曉孟(ジャン・シャオモン)を迎えて一緒に新しい生活を始めようとする。しかし、15年前のある事件と関連する殺人事件が起き、方毅任(ファン・イーレン)は第一容疑者となってしまう……。

▼予告動画

『次の被害者2』の登場人物 / キャスト

※ネタバレも含むためご留意ください。

方毅任(ファン・イーレン)/ 演:張孝全(ジョセフ・チャン)

アスペルガー症候群の鑑識官。シーズン2で娘を引き取って新しい生活を始めようとするが、殺人事件の第一容疑者となってしまう。

方毅任(ファン・イーレン)の少年時代を演じたのは曾敬驊(ツェン・ジンホア)。話し方や仕草、目つきをうまく表現している。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

徐海茵(シュー・ハイイン)/ 演:許瑋甯(シュー・ウェイニン)

新聞社社会部の記者だったが、シーズン2で七葉児童福祉慈善財団の広報担当に転身する。方毅任(ファン・イーレン)との関係も一歩進んで、恋人(だがちょっと複雑な状態)となる。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

趙承寬(チャオ・チョンクワン)/ 演:王識賢(ワン・シーシェン)

刑事の課長。方毅任(ファン・イーレン)のことを信頼している。シーズン1のパーマをかけた髪型から変わって今回はショートのストレートヘア。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

江曉孟(ジャン・シャオモン)/ 演:李沐(ムーン・リー)

方毅任(ファン・イーレン)の娘。シーズン2で父との新しい生活をスタートさせる。第1話で一緒に星の折り紙をしていたのは微笑ましいけど、二人とも関係構築に悩んでいる様子。

新しい仕事として特殊清掃業を始め、人生の意義を見出していく過程が良い。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

薛欣寧(シュエ・シンニン)/ 演:蘇慧倫(ターシー・スー)

法医学者。一緒に事件の捜査に協力する。

台湾の歌手・蘇慧倫(ターシー・スー)は11年ぶりに俳優業復帰。今53歳なのに驚いた。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

張耿浩(チャン・ゲェンハウ)/ 演:ディーン・フジオカ

検事。15年前の事件の再捜査を開始する。

ディーン・フジオカが全編中国語(北京語)で演じたのが凄い。もちろんどうしてもネイティブではないと分かってしまう部分があるけど、山本という人物との関係など、今後の伏線になるのかな?

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

蕭敏君(シャオ・ミーチュン)/ 演:尹馨(イン・シン)

蕭家穎(シャオ・チアイン)の母。最初は子ども思いの母親だなと思っていたが、話が進むにつれて複雑な気持ちになる。

女優の尹馨(イン・シン)は台湾ドラマ『課外授業~Lesson in Love~』(第9節課)でも息苦しさを感じさせる母親像をうまく演じた。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

林明誠(リン・ミンチェン)/ 演:劉俊謙(ラウ・チュンヒム)

七葉児童福祉慈善財団のCEO。警官・林景瑞(リン・チンルイ)の息子。

香港の俳優・劉俊謙(ラウ・チュンヒム)は台湾ドラマ『此の時、この瞬間に』(此時此刻)への出演で台湾で話題となり、台湾映画やドラマへの出演が増えたな。

高校時代を演じたのは劉子銓(リウ・ツーチュアン)。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

Facebook「劉子銓Troy」より

蕭家穎(シャオ・チアイン)/ 演:陳姸霏(チェン・イェンフェイ)

15年前の事件で亡くなった女子高生。底抜けに明るい女の子かと思いきや展開が悲しい。

陳姸霏(チェン・イェンフェイ)は映画『青春18×2 君へと続く道』でバイト仲間を、台湾ドラマ『WAVE MAKERS ~選挙の人々~』(人選之人—造浪者)で娘役を演じている。

X「瀚草文創 GrX」より

陳央宇(チェン・ヤンユ)/ 演:劉宥慳

15年前の事件で亡くなった男子高校生。蕭家穎(シャオ・チアイン)の彼氏だと言われていた。

Facebook「劉宥慳」より

袁綺翎(ユエン・チーリン)/ 演:林愷倫(Karencici)

人気歌手。蕭家穎(シャオ・チアイン)の過去の事件と関係があるだろうと思ったら……。

シーズン1の主題歌を歌った林愷倫(Karencici)が今回のシーズン2の主題歌〈去我們的遠方〉(遠い私たちの場所へ)も歌う。YouTubeなどでは役名「袁綺翎」の名義でリリースされている。

高校時代を演じたのは林宴慈(リン・ヤンチー)。

X「瀚草文創 GrX」より

劉書妍(リウ・シュエン)/ 演:蔡思韻(セシリア・チョイ)

デザイナー。蕭家穎(シャオ・チアイン)の過去の事件と関係がありそう。

演じたのは香港の女優・蔡思韻(セシリア・チョイ)。台湾映画『返校』にも出演。なんと林明誠(リン・ミンチェン)を演じた香港俳優・劉俊謙(ラウ・チュンヒム)の彼女だった。

高校時代を演じたのは朱勻甄。

X「瀚草文創 GrX」より

劉志明(リウ・チーミン)/ 演:鄭志偉(チェン・ジーウェイ)

劉書妍(リウ・シュエン)の父。アル中で娘のことにあまり目を向けなかったよう。

鄭志偉(チェン・ジーウェイ)は台湾映画『僕と幽霊が家族になった件』(關於我和鬼變成家人的那件事)にも出演。

吳俊律(ウ・チュンル)/ 演:潘綱大(パン・ガンダー)

林明誠(リン・ミンチェン)と一緒に慈善財団を立ち上げたが、仲違いとなる。

潘綱大(パン・ガンダー)、台湾ドラマ『WAVE MAKERS ~選挙の人々~』(人選之人—造浪者)と台湾映画『ガッデム 阿修羅』(該死的阿修羅)にも出演。

高校時代を演じたのは李恩佑。

郭昕白(クオ・シンパイ)/ 演:杜姸

吳俊律(ウ・チュンル)の元恋人。他の事件で亡くなっていた。

高校時代を演じたのは蔡佳彤(アニタ・ツァイ)。

林景瑞(リン・チンルイ)/ 演:喜翔(シー・シアン)

元巡査警官部長。方毅任(ファン・イーレン)の恩師で、彼のことを怪物ではなく、みんなと違っているだけだと肯定してくれた。15年前の事件で不正をした疑惑がある。

喜翔(シー・シアン)はさすがのベテランの演技。『R.I.P. 霊異街11号』(靈異街11號)での刑事役も良かったけど、今回の恩師であると同時に裏がある役も素晴らしかった。

Facebook「喜翔」より

羅世賢(ロウ・シーシェン) / 演:游安順(ヨウ・アンシュン)

元警察官。15年間の事件を林景瑞(リン・チンルイ)と一緒に担当した。今は特殊清掃業を営む。

実はシーズン1での被害者・游誠皓(ヨウ・チョンハオ)のおじであるとのちに分かる。江曉孟(ジャン・シャオモン)との巡りあわせはある意味運命だろう。游安順(ヨウ・アンシュン)は冷たく厳しく見えるけど実は優しいキャラがよく似合うので、もう少し出番を見たかった。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

小廖(リャオ)/ 演:張再興(チャン・ザイシン)

警察官。チャン検察とチャオ検事の間でうまく立ち回っている(?)。

張再興(チャン・ザイシン)は台湾映画『僕と幽霊が家族になった件』(關於我和鬼變成家人的那件事)など最近良く見かける。

Facebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より

陳耀輝(チェン・ヤオフイ)/ 演:馬念先(マ・ニェンシェン)

鑑識の同僚。普段面白い役が多い馬念先(マ・ニェンシェン)だが、今回は至って真面目。それも面白い笑

山本 / 演:江常輝(スティーブン・ジャン)

張耿浩(チャン・ゲェンハウ)の部下のような謎の存在。同じ謎の組織に所属しているようで、名前が「山本」なのも謎。今後伏線が回収されるのかな。

『次の被害者2』の主題歌

袁綺翎〈去我們的遠方〉

事件解決の鍵にもなり、曉孟(シャオモン)に生きる勇気と、父・方毅任(ファン・イーレン)との関係変化に影響を与えた歌。

歌詞の「就當作我 生下來 就沒有故鄉」(生まれた時から 故郷はなかったことにして)が切なくて印象的だが、ドラマを見返したら蕭家穎(シャオ・チアイン)が高校のときに作った歌詞を使ったんだね。彼女の生い立ちが凝縮されたワンフレーズだ。

LaDY〈Xanadu〉

第6話の最後、林明誠(リン・ミンチェン)のもとに真犯人がやってきたときに流れた曲。「やっと来たか」の一言で林明誠(リン・ミンチェン)は死んで償う覚悟をしていたのだなと分かる。(それだったら15年前に隠蔽しないでほしかったけど)

第7話で、薛欣寧(シュエ・シンニン)と蕭敏君(シャオ・ミーチュン)の過去が明かされたときも流れた。曲名の”Xanadu”は調べたら桃源郷という意味だった。

閻奕格〈陽光下的陰影〉

メロディが切なくも優しさもある。最終話で、薛欣寧(シュエ・シンニン)の見た目をした蕭敏君(シャオ・ミーチュン)が、娘の蕭家穎(シャオ・チアイン)と対面するシーン

歌詞の「陽光 從天堂降下來 往世間覆蓋 不放過 任何一顆塵埃」は、罪を犯した者への復讐と贖罪を表しているようだ。

JUD 陳泳希〈蒼白〉

第7話で、少年少女たちが陳央宇(チェン・ヤンユ)を間違えて撃ってしまい、蕭家穎(シャオ・チアイン)のことも事故で殺してしまうシーンで流れる。

魅惑的な歌声を持つ陳泳希は、ドラマ『セックスを語るなら』(愛愛內含光)の主題歌と挿入歌5曲でデビューしたスーパ新人。歌詞の「誰都別想 一個人 虛偽的 狡黠的 置身事外」は、まるで共犯者たちである高校生たちに向けられたメッセージのようだ。

藤岡靛(ディーン・フジオカ)〈In Truth〉

ドラマのエンディング曲は、ディーン・フジオカが中国語で歌っている。最終話は日本語版。

『次の被害者2』の感想

※ネタバレも含むためご留意ください。

シーズン1では「自分と向き合い、自分らしい人生をみつけることの難しさと重要性」が印象に残ったが、、シーズン2では「未熟な親が子へもたらす悲劇」「親子関係の修復過程」が心に残った。

家出少年少女たちの影

家出少年少女たちに目を向けると、親からの無関心愛情の欠乏コミュニケーション不足などの共通点が見られる。袁綺翎(ユエン・チーリン)は親の厳しい音楽教育方針で関係がこじれ、劉書妍(リウ・シュエン)は母がいなくなったことで父が酒に溺れ、娘へ十分関心を向けることができなくなった。

一番深刻なのが蕭家穎(シャオ・チアイン)と蕭敏君(シャオ・ミーチュン)親子。ドラマ冒頭で、同級生から親が医者でいいでしょ、のようなことを言われていたので、親が仕事に忙しすぎて娘に寂しい思いをさせていたのかと思ったが、ドラマ終盤で想像以上に切ない過去が明かされる。

もちろん最初にDVをした夫も悪いけど、母が犯罪を隠蔽したのはそもそもありえないことだし、親の過ちで娘を長年苦しめるだけでなく、父と母の片方につかせようとする言動は一番子供を傷つけ、子供が生まれてきた意義を否定するようなことだと、どうして親自身は分からないんだろうと、見ていてとても辛くなった。

他の少年少女たちも、家出をして事件を起こしたのに、15年経っても明るみに出なかったのは、それぞれの親がそこまで子供に目を向けていなかった、変化に気づかなかったという現れだろう。

方毅任(ファン・イーレン)親子の関係修復

方毅任(ファン・イーレン)と江曉孟(ジャン・シャオモン)の関係に目を向けると、父のことを「お父さん」や「パパ」ではなく、終始フルネームの「方毅任(ファン・イーレン)」で呼んでいることから、ぎこちない関係であることがうかがえる

娘のことを心配し、ついつい細かく口出ししてしまう方毅任(ファン・イーレン)と、自分が抱える悩みを打ち明けてくれず、距離感に悩む江曉孟(ジャン・シャオモン)。お互い相手のことを思いやっているはずだが、表現が不器用で衝突してしまうのが良く理解できる。

その後、シーズン1の遺願殺手事件(最後の願い事件)で、自分だけ生き残った罪悪感で苦しむ江曉孟(ジャン・シャオモン)が、特殊清掃の仕事を通して自分が生き残った意義を見出す。方毅任(ファン・イーレン)が危険に晒された際、自分にはもうこの家族しか残されていないんだと叫んだところがとても切なくも、大切に思いあっていることが分かってホッとした。

方毅任(ファン・イーレン)も人生の恩人である林景瑞(リン・チンルイ)の不正で、自分の過去を否定されたような気分にあり、自分の仕事の不備に悔やんでいる際に、徐海茵(シュー・ハイイン)に「人間に感情があるのは当然だよ」と教えられ、自分の過去に向き合ったのが良かった。

再現度が高く直視できない犯行現場

一番の感想は、シーズン1同様グロテスクで迫真的なシーンが多いので、食事を食べながら見るのは絶対止めたほうが良いこと。

犯行手法が猟奇的で真犯人が一線どころか、何線も超えてもう人間ではないんだろうと実感する。(本人は吐き気止め薬を常備して、人間であることを忘れないようにしているのだが)歌手は声帯、デザイナーは目と商売道具を無残に切られたり、舌を切ったのは秘密を守ろうとしたことに対する風刺なのかと思った。

林親子については、キリスト教を信仰しているとみられるが、キリスト教から懺悔の念を象徴していると受け取れる。また、最後に血をすべて流して亡くなっていくのも、血によっての贖罪という隠喩だろう。

※ヘッダー画像はFacebook「瀚草影視 Greener Grass Production」より


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