台湾ドラマを見て夫と中国語(台湾華語)を学ぶシリーズ、今回は『華麗なるスパイス』第15話~17話から、面白いと思った台湾の中国語表現、単語、文化とあわせて、感想を紹介していきたい。
<以下ネタバレ含む!>
第15話「耳朵癢」
- 台湾華語(中国語)表現:耳朵癢
- 発音:ㄦˇ ㄉㄨㄛ ㄧㄤˇ/ěr duo yǎng
- 日本語訳:耳が痒い(俗説:誰かに恋しがられているが、悪口を言われている)
前回では廷恩(ティンエン)が芬青(フェンチン)に告白し、キスまでしてしまうが、ティンエンの母親は相変わらず如曦(ルーシー)と結婚させたがっている。第15話でティンエンの母親がルーシーに「ところで弟さんは?」と聞き、ルーシーが「少威(シャオウェイ)ですか?そのうち戻ってくると思います」と答える。さらに次のシーンでは場面が変わり、シャオウェイが「耳が痒い」と話す。
今までの記事でまだ書いていないかもしれないが、実はシャオウェイはルーシーの実の弟で、訳あって家を出て夜市で働いているのだ。そしてここで注目したいのは、シャオウェイが話した「耳朵養」(耳が痒い)という台湾の表現。
台湾では「耳朵癢(耳が痒い)」時は、「有人在想你」(誰かに思われている、恋しがられている)、または「有人在罵你」(誰かに悪口言われている、叱られている)から、耳が痒くなると言われている。由来は分からないが、台湾人ならよく知る表現なのだ。
第15話ではまさにティンエンの母親とルーシーがシャオウェイの話をした後、シャオウェイが「耳朵有點癢」(耳がちょっと痒い)「可能有人在罵我」(誰かに悪口言われているかもしれない)と呟き、フェンチンは「我看是有人在想你吧」(誰かに恋しがられているんじゃない?)と答える。台湾人が「耳が痒いな」と言っていたら、「あら~誰かに恋しがられているんじゃない~」と答えると、きっと台湾通認定されるはず!
第16話「三八」
- 台湾華語(中国語)単語:三八
- 発音:ㄙㄢ ㄅㄚ/sān bā
- 日本語訳:(女の子に対する悪口)お転婆な、ふざけた、派手な、ふしだらな、軽い感じの子
第16話で、芬青(フェンチン)と廷恩(ティンエン)の仲が接近していることを知りながら、フェンチンへの思いが止まらない少威(シャオウェイ)が、どんな感じで告白して付き合えるかを妄想し始める。馬乗りしながら結ばれるという白馬の王子的な展開を妄想すると、「いやいや、フェンチンはこんな『三八』な子ではない」と我に返る。
台湾での「三八」という表現について、日本語版字幕では「ふしだらな女」と訳されているが、正確に訳すのはかなり難しい。中国語の辞書を調べると「罵人行為不檢點、不正經的話。」(人の行為がふしだらで、正常ではないことを罵る言葉)という説明の通り、台湾では特に女性がふしだら、軽いことを表現する時に使う。ただ、ふしだらな「尻軽女」まで行かなくても、日常生活では「キャーキャー叫んでて騒がしい」「キャピキャピしすぎ、派手な」「バカっぽい」女の子、もしくは男の子のことも「三八」と言ったりする。英語で親愛を込めていう「Bitch」や、日本でいう「ギャル」みたいなものかなと思う。
語源は諸説あるが、私が比較的聞くのは以下二つの説。
- 清朝末期に欧米諸国から西洋人が中国にやってきたが、清朝政府は鎖国し、特定地域でしか活動できないよう制限をかけた。ただ、外国政府の圧力により、清朝政府も次第に制限を開かざるを得らず、毎月八日、十八日、二十八日に町に行って活動して良いと許す。それを機に、中国の一般人も毎月の三つの八が付く日(三八)に西洋人を見かけることができ、初めてみる見た目や服装などが奇抜に感じたため、「三八」=「奇妙な、ノーマルではない」を指すようになった説。
- 毎年3月8日の「国際女性デー」から、「三八」=女性、さらにはマイナスのイメージで使われるようになった説。
なお、第13話では、シャオウェイがお花畑でお姫様のようなフェンチンを想像して「いやいや、こんなに『三八』な子ではない」と言っているが、これは「お馬鹿さん」「お花畑」に近い表現だろう。もちろん、台湾人に「三八」と言ってしまうと、よほど親しい仲でないと不快に感じる人もいるので要注意だ!
第17話「未婚妻」
- 台湾華語(中国語)単語:未婚妻
- 発音:ㄨㄟˋ ㄏㄨㄣ ㄑㄧ/wèi hūn qī
- 日本語訳:女性の婚約者、フィアンセ
廷恩(ティンエン)と芬青(フェンチン)、如曦(ルーシー)と少威(シャオウェイ)の三角関係(四角関係?)が決着しない中、ティンエンの母親は記者が集まる晩餐会でティンエンとルーシーの婚約発表を行おうと計画する。それに気づいたティンエンは、フェンチンに「助けてくれないか」と聞き、記者の前で「她就是我的未婚妻,她叫衛芬青」(彼女こそ私の婚約者だ。名前はウェイ・フェンチンだ)と宣言してしまう。
中国語の「未婚妻」は漢字の通り、結婚する前の妻、つなわち婚約者だ。なお、中国語ではフランス語のように、婚約者は性別によって言葉が変わり、男性だと「未婚夫」(ㄨㄟˋ ㄏㄨㄣ ㄈㄨ|wèi hūn fū)という。
フェンチンも助けるとは言ったものの、さすがの婚約者発言に驚きを隠せず、「え、こんな話だった?」みたいな顔をしている。そこでティンエンが「ほら、何か言いなよ」と促し、フェンチンは「我叫未婚妻,是他的衛芬青」(婚約者と言います。彼のウェイ・フェンチンです)と動揺のあまり言葉の順番を間違えてしまう。
ここでようやくフェンチンの名前に込められたダジャレに気が付くが、「衛芬青」(wèi fēn qīng)の中国語の発音は、婚約者の中国語「未婚妻」(wèi hūn qī)によく似ている。本当は「我叫衛芬青,是他的未婚妻」と言うべきだが、こんなに発音が似てると間違えそうだな。
ティンエンとフェンチンが本当に結婚したら、ルーシーとシャオウェイは姉弟そろって失恋してしまうから、なんとも悲しい展開になってきた。偽婚約者事件はどうなるのか、続きはまた次回!
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