道教の神様:日本でも馴染み深い神様たち

道教は台湾・中国の宗教の一つである。日本人にはあまり馴染みがないものの、様々な面で日本にも大きな影響を与えている。そこで、今回はそんな近くて遠い道教の神様をまとめてみた。

道教は日本の神道と同じ多神教であるため、多くの神様が信仰されている。ただ、道教の神様を見ると、道教ならではのユニークな点も多い。

  • 元は人間だったが、神格化されて神様になった例:「関聖帝君」、「媽祖」、「鍾馗」など。
  • 悪鬼や悪霊が改心して、神様になった例:「千里眼」、「順風耳」など。

日本でも馴染み深い道教の神様たちを見てみよう。

「関聖帝君(かんせいていくん)」

三国志において劉備、張飛と義兄弟の契りを結んだ関羽は、日本人にも馴染み深い。関羽が道教の神様として神格化されたのが「関聖帝君」である。

横浜の中華街にある「関帝廟」も、「関聖帝君」を祀った廟(仏教でのお寺・キリスト教での教会)である。横浜以外にも函館、大阪、神戸、長崎など華僑が多く住んでいる都市には「関聖帝君」が祀られている。世界の華人の街で最も多く祀られている道教神は「媽祖」、次に「関聖帝君」と言われており、道教において最もポピュラーな神様だ。

横浜の関帝廟(辛党R撮影)

関羽は元々武将であったことから、「関聖帝君」は武神としての一面もあるものの、一般的には商業の神様として商人や実業家に信仰されている。

なぜ、元々武将である関羽が商売の神様とされているのだろうか。これは、関羽が金銭出納簿や算盤を発明したとされているほかに、以下の様な話にも由来しているようだ。

魏の曹操は関羽を仲間にしたかったため、関羽を捕らえた時に金銀を与えて接待した。そんな手厚い待遇を受けていたものの、関羽は劉備への義理を守るため、ある夜、曹操から貰った金銀はそのまま残し、一緒に捕まっていた劉備の妻を守りながら、劉備のもとに逃げ帰った。

このように義理や忠義に厚く、金銭にも淡泊であったことから商売の神様として信仰されている。

「媽祖(まそ)」

「媽祖」は航海の安全を守る女神。元々、宋の時代に福建省で生まれた人間で、生まれてしばらく泣き声も立てないので「黙娘」と呼ばれていた。少女の頃から人々を占い、人気を集めていたが、二十九歳で亡くなる。彼女の死後、彼女を信じていた人々が廟に祀ったようである。

福建の人々が海外に渡る中で媽祖信仰は広がり、現在は台湾や福建省、東南アジアの華人の間で信仰されている。

特に台湾では深く信仰されており、「媽祖」の誕生日とされる旧暦三月二十三日の時期には、各地の媽祖廟で「進香」という巡礼が行われる。

「進香」は、もともと有名なお寺や廟に赴き参拝することを指す。台湾の媽祖信仰に関していうと、台湾では媽祖信仰が深まるにつれて媽祖廟が増え、分社化が進んでいったので、毎年決まった時期に、元の媽祖廟に戻ってお祈りと挨拶をする伝統がある。この伝統行事も「進香」と呼ばれ、特に台中の「大甲媽祖繞境進香」、高雄の「朝后宮徒步進香」は、規模が大きく、県を跨いで徒歩で巡行するので有名だ。

なお、「媽祖」は「千里眼(せんりがん)」と「順風耳(じゅんぷうじ)」という神を脇に従えている。「千里眼」は千里先の出来事も感知して、あらゆる災害から媽祖を守る鬼神、「順風耳」は世界のあらゆる悪の兆候や悪巧みを聞き分け、媽姐に知らせる鬼神である。

元々、「千里眼」と「順風耳」は悪鬼だったものの、「媽祖」によって改心して、「媽祖」に従うようになった。

「鍾馗(しょうき)」

「鍾馗」は、中国、台湾の伝統宗教(道教)の神。魔除け・鬼退治・避邪の神である。もともと中国の唐代に実在した人物だと言われるが、以下の説が有名だ。

唐皇帝玄宗が高熱で床に臥せる中、夢の中で小鬼が登場し、玄宗の玉笛や楊貴妃のにおい袋を盗もうとするが、巨大な鬼が登場して小鬼を喰べてしまう。玄宗が驚くと、巨大は鬼は「鍾馗」と名乗り、科挙(国家試験)で落第した恥ずかしさから自殺したが、皇帝の唐高祖が手厚く葬ってくださったので、妖怪どもを退治して恩に報いようとしたと言う。目が覚めた玄宗は病もすっかり治ったので、鍾馗の絵を飾り魔除けするよう民間に広めたという(参照:台湾ドラマ『天巡者』:あらすじと登場人物、道教の神々の紹介)。

「鍾馗」は日本でも邪気除け、疫病封じの神様として知られている。京都の町を歩くと、瓦屋根の上に「鍾馗」が置かれており、鍾馗さんという名前で親しまれている。

「福禄寿(ふくろくじゅ)」・「寿老人(じゅろうじん)」

「七福神」で知られる「福禄寿」と「寿老人」も道教の神様である。「福禄寿」は長頭白髭の老人で、杖を持ち鶴を従えている姿が一般的だ。そして、「寿老人」の姿は「福禄寿」とよく似ている。なぜだろうか。

昔、南極老人星(カノープス:りゅうこつ座α星)は、天下泰平の時にしか見えないという信仰があった。そのため、中国の皇帝は南極老人星を祀り、天下の太平を願った。この星が「南極老人」として神格化されると、幸福や長寿をつかさどるとされた。

「福禄寿」と「寿老人」は、どちらも同じ南極老人星に基づいた神様であるため、姿が似ているようだ。

「玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)」

日本では聞き馴染みのない神様であるが、「玉皇大帝」は台湾や東南アジアの華人の間では道教の最高神と考えられており、世の中の全ての神や仙人を支配する神様である。

「玉皇大帝」の廟は、「関聖帝君」や「媽祖」のように多くはない。但し、台湾ではこれらの廟に訪れた際も、一番最初にお香を持って天(=「玉皇大帝」)を仰ぎ、「玉皇大帝」に祈りを捧げてから、「関聖帝君」や「媽祖」などの神様に祈るのである。

※道教の世界をモチーフにした台湾ドラマ『天巡者』の紹介記事はこちらから


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