『天巡者』:あらすじと登場人物、道教の神々の紹介

2020年10月25日から放送開始の台湾ドラマ『天巡者』(The Devil’s Punisher)は、台湾大手テレビ局台視と三立が制作した神話系ファンタジードラマで、道教系の神・鬼王「鍾馗」が鬼退治する話を描く。

今まで台湾で見る神話系のドラマは、いつも古代の服装をした神々ばかりだったが、今回の『天巡者』は初めて現代人の服装を着用し、かつ現代社会を舞台に物語が繰り広げられる作品なので、古代神話ロマンスと現代テクノロジーの融合が見どころだ。

しかも、登場人物は全員美男美女で、道教や民間伝承の神々でありながら愛情物語も描かれており、話の展開がとても気になるところ。台湾のテレビ局だけでなく、なんとNetflixともコラボしており、グローバル各国でも同時に放送されるという。日本のNetflixでも見れるようなので、これはぜひ台湾と時差無しで内容を追いかけたい!

ただ、道教や台湾民間伝承をモチーフにしているので、今回はドラマの内容をより楽しめるよう、道教の神々についての基礎知識とあわせて登場人物を紹介していきたい。

『天巡者』あらすじ

冥界の女神「孟婆1087」は、冥府の奈何橋で「孟婆スープ」を作り、来世に転生する人々に飲ませる仕事を1087年も続けてきた。よく亡霊を連行して奈何橋を通りかかる鬼王「鍾馗」は、いつもこっそり「孟婆1087」のことを気にかけていた。

ある日、奈何橋で起きた爆発事件によって「孟婆1087」は人間界に落とされ、多くの亡霊も騒ぎに紛れて人間界に逃げてしまう。鍾馗は重傷を負いながらも、天を巡視する「天巡者」の責任を全うすべく、期限内に亡霊をすべて捕まえて連れ戻そうとする。また、人間界に墜落した「孟婆1087」は記憶を無くしてしまうが、身に着けた匂い袋が唯一彼女の身分を知らせる手がかりとなる。

怪我を負った鍾馗は鬼退治しつつ、「孟婆1087」のことを一番心配している。なぜなら、鍾馗は彼女に対して1000年以上もある秘密を隠してきて、ずっと気にかけてきたのだ。例え「孟婆1087」が記憶を無くし、彼のことも、二人の間で起きた切ない過去の出来事をすべて忘れてしまっても……

『天巡者』に登場する道教・民間伝承の豆知識

「孟婆」と「奈何橋」

「孟婆」は、中国、台湾の伝統宗教(道教)の神。忘却を司る冥府の女神である。

古代に生まれ、姓は「孟」だが名前は不詳で「孟婆」と呼ばれる。山に入り修行した結果、道を悟るが、そのころはよく人間界で前世の記憶を知るため、天の機密が漏れてしまうことが多々あったため、天の神は孟婆を忘却の神と任命した。

冥界(地獄)の出入口には「奈何橋」という橋が架かっており、孟婆はそこに常駐し、転生前の魂を捉えて「孟婆スープ(中国語:孟婆湯)」を飲ませることで、前世や冥界での一切の記憶を消し、生前の因縁・愛情・憎悪などの感情を来世の人生に持ち込ませないようにしている。

「孟婆スープ」は孟婆が薬草を集めて、「忘川」の川水を加えて作っている。冥界を離れる者はこれを飲むと完全に記憶を失うが、飲まずに転生した者は、前世の記憶を持ったまま生まれるという。

「婆」の名の通り、「孟婆」といえば老女をイメージするが、ドラマ『天巡者』の孟婆は若くて綺麗な美少女なのでびっくり!

「鍾馗」

「鍾馗」は、中国、台湾の伝統宗教(道教)の神。魔除け・鬼退治・避邪の神である。もともと中国の唐代に実在した人物だと言われるが、以下の説が有名だ。

唐皇帝玄宗が高熱で床に臥せる中、夢の中で小鬼が登場し、玄宗の玉笛や楊貴妃のにおい袋を盗もうとするが、巨大な鬼が登場して小鬼を喰べてしまう。玄宗が驚くと、巨大な鬼は「鍾馗」と名乗り、科挙(国家試験)で落第した恥ずかしさから自殺したが、皇帝の唐高祖が手厚く葬ってくださったので、妖怪どもを退治して恩に報いようとしたと言う。目が覚めた玄宗は病もすっかり治ったので、鍾馗の絵を飾り魔除けするよう民間に広めたという。

もう一つの説も有名だが、長くなりそうなので今度紹介することにしよう。ちなみに、鍾馗の絵はこのように、魔除けできるよう鬼も怖がるような形相で描かれがちだ。ドラマ『天巡者』では物憂げな紳士で、かつ孟婆を千年も見守ってきた設定なので、これも真新しい脚色でとても面白そう。

Wikipedia「鍾馗」より引用

『天巡者』の登場人物 / キャスト

※以下画像と内容はすべて台視ホームページと、三立華劇Facebookより引用

鬼王・鍾馗「鍾正南」(チョン・ジョンナン)/ 賀軍翔(マイク・ハー)

人間界でパン職人として働く「鍾正南」、実は魔除け・鬼退治の神様「鍾馗」。

冥府の奈何橋爆発事件で、冥府の女神「孟婆」が「吳青原」に攫われて人間界に転落してしまったので、冥府の王「秦廣王」に命じられて調査を始める。必死に捜査した結果、人間界で孟婆を見つけるも、彼女は「孟心語」という新しい名前をつけられ、彼のことも全く覚えていない。鍾馗は人間界で孟婆を守りながら、怨霊を助けることを決める。

孟婆1087「孟心語」(モン・シンユー)/ 邵雨薇(シャオ・ユーウェイ)

つぶらな目にキュートな笑顔、楽観的でかつ心優しい女の子「孟心語」、実は冥府の女神「孟婆」として千年以上も働き、仕事に倦怠感を覚えていたが、奈何橋を通る亡霊にはいつも真摯な態度で向き合っていた。

奈何橋爆発事件で人間界に転落し、記憶を無くした彼女は「恩熙」に保護され、「孟心語」という新しい名前で人間界の探索を始める。失った記憶を追い求めると同時に、ふと現れた男「鍾正南」に特別な感情を持っていることに気が付く。

大学教授「盧博雅」(ルー・ポヤ)/ 陳璽安(チェン・シーアン)

紳士的かつ優しい大学教授で、学生のファンも多く、彼が担当する授業はすべて満席だという。高学歴で頭も良く、幅広い知識を持つので、化学も玄学(古代中国の哲学思想)にも精通する。

同時にカフェも営んでおり、縁あって「孟心語」をバイトとして雇い始め、彼女に恋してしまう。「孟心語」を通して「鍾正南」と知り合い、何度かの怪奇現象に遭遇すると、彼が一般人でないと察し、自分の知識を活用して彼の手助けをするようになる。

守護神「城隍」/ 楊銘威(ヤン・ミンウェイ)

鍾馗の大親友で、何でも話せる仲。鍾馗が上司から奈何橋爆発事件の調査を命じられ、かつ人間界に攫われた孟婆を探すために人間界で活動する間も、冥府の司法体制を司る城隍爺が多くの支援を与えてくれた。

一見口達者で軽薄そうに見えるが、実はとても信頼できる人。鍾馗、秦廣王とは千年以上の仲で、よく口喧嘩するが、鍾馗に難があれば必ず親友のために力を貸す。

冥府の裁判官「秦広王」/ 周曉涵(アマンダ・チョウ)

冥府第五殿の最高責任者、鍾馗と孟婆の直属上司。クールビューティーで覇気がある姉御肌で、誰もが恐れる神だが、鍾馗だけが彼女のことを恐れていない。

よく鍾馗にちょっかいを出したりし、気のあるようなふりをするが、鍾馗は全く秦廣王のことが眼中にないよう。ただ二人の関係を、孟婆(孟心語)は一度疑ってしまう。また、自分の地位を利用して鍾馗の手助けをするが、そのことで処分されてしまう。

孟心語の親友「李恩熙」(リー・エンシー)/ 程雅晨(チョン・ヤーチェン)

学費と生活費を稼ぐために複数のバイトをこなす女の子。賢くてプライドも高いが、愛情に関しては繊細で自信がない。

お金持ちの子息「歐陽凱」と出会い、いつも口喧嘩して仲が悪そうに見えるも、歐陽凱は徐々に彼女のことが好きになる。ところが、教授・盧博雅が何度か彼女を助けたことで、彼女は博雅に心惹かれてしまう。ただ、博雅が好きなのは彼女ではなく、親友の孟心語であった。

お金持ちの子息「歐陽凱」(オウヤン・カイ)/ 張洛偍(ロイ・チャン)

態度が大きく偉そうに見えるボンボンで、何でもお金で解決しようとする。唯一手こずったのが女の子「李恩熙」との関係で、彼女が好きでいつもからかってしまうも、逆にぎゃふんと言わせられることも多い。

実は根はとても心優しく、鍾馗(鍾正南)と知り合ると、亡霊退治する彼に憧れて弟子入りしたいと言う。また、李恩熙のことが好きになったことで、自分の言動を反省し、精進して良い一面を見せたいと努力し始める。

道教の神や人間界の一般人、人間界に落ちた神が物語を繰り広げていくので、これからの物語の展開がとても気になる!鬼退治のアクションやCGも注目ポイントなので、第1回を見るのが楽しみだ。


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