『青春18×2 君へと続く道』18年前の初恋の記憶を巡る日台合作映画【原作との関連性】

青春18×2 君へと続く道』(中国語タイトル『青春18×2 通往有你的旅程』)は、2024年に公開された日台合作映画。監督は藤井道人、主演は許光漢(シュー・グァンハン)と清原果耶。

月初に鑑賞に行き、王道の初恋ラブストーリーで途中から話の展開が読めてくるものの、人生という旅を続けられる勇気をもらいました。甘酸っぱい青春と初恋、大人の現実と夢の軌跡をジミーとアミと一緒に歩んだ感覚になり、最後の結末には涙が止まらず、服の襟元が涙で濡れたまま映画館を出ました。

本作は台湾のバックパッカーがネット掲示板で投稿した実話がベースになっていますが、家に帰ってその投稿を読んだらまた涙が出てきてしまい、30分ほど余韻に浸りました。

映画の内容はもちろん100%実話のままというわけにはいきませんが、7~8割くらいは実話をベースにしていると感じました。こちらの記事では、原作との関連性を紹介したいと思います。

映画『青春18×2 君へと続く道』のあらすじ

今から18年前、2006年夏の台湾・台南で、高校生のジミーは日本人バックパッカーのアミに出会う。一緒に台南での日々を過ごすうちに、アミに恋心を抱き始めるジミーだが、突然アミが日本へ帰国することになる。

それから18年の年月が経ち、2024年冬、人生に挫折し故郷の台南に帰郷したジミーは、かつてアミから受け取ったハガキを見つけ、アミが生まれ育った日本の故郷を目指し、日本での一人旅を始める。

▼映画『青春18×2 君へと続く道』公式サイト

https://happinet-phantom.com/seishun18x2/

▼予告動画

原作『《青春.18 x 2》日本慢車流浪記』について

本映画は、俳優の張震(チャン・チェン)の友人が台湾で話題になった紀行エッセイ『青春18×2 日本慢車流浪記』を読んだことをきっかけに、張震(チャン・チェン)がエグゼクティブ・プロデューサーとして映画化を企画しました。藤井監督や他大勢の方の協力のもと、素敵な映画が完成しました。

ちなみに、張震(チャン・チェン)はかの有名な台湾映画『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』で主人公の小四を演じ、デビューした俳優です。映画『青春18×2 君へと続く道』には出演していませんが、実は彼の姿が少しだけ登場していました!

台南の映画館「全美戲院」のシーンで、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督による台湾映画『最好的時光』(邦題『百年恋歌』、2005年)の手書き看板が一瞬写り、その看板に主演の張震(チャン・チェン)と舒淇(スー・チー)の姿が描かれているのです。

話がそれましたが、映画の原作である紀行エッセイ『青春18×2 日本慢車流浪記』は、「背包客棧」という台湾の旅行情報共有用ネット掲示板に投稿された記事「《青春.18 x 2》日本慢車流浪記」がベースとなります。記事のタイトルは日本語にすると「青春 18×2:日本鈍行列車さすらいの旅」が近い。

2014年4月に投稿された記事がネットで反響を呼び、その後原作者の賴吉米(ジミー・ライ)が小説『青春18×2:日本慢車流浪記』としてリライトし出版しています。

記事の原文を読んだ後、「事実は小説より奇なり」——映画の内容が思ったより実話に近いことに驚くと同時に、過去の記憶を一人旅を通して回想し、温かい文字で具現化できている作者の表現力や感受性の高さがとても印象に残りました。中国語(繁體中文)が分かる方はぜひ読んでみてください。

映画『青春18×2 君へと続く道』日本旅の道のり

※以下ネタバレがあります※

映画内で、事業で失意のどん底を味わうジミーは、アミの故郷を目指して日本での一人旅を始めます。道中、色んな方と出会い、助けられながら旅を進めていくジミーは、心も救われていくのではと想像しています。

映画内でのジミーの旅程を振り返ると以下の通りです。

  1. 【東京】JR品川 …ここから出発
  2. 【神奈川】江ノ島電鉄 鎌倉高校前駅の踏切 …『SLAM DUNK』の聖地巡礼
  3. 【神奈川】由比ヶ浜 …海辺の景色で台南の思い出を回想
  4. 【長野】松本駅の居酒屋 …台湾出身の店主リュウ(張孝全)に出会う
  5. 【長野】松本城 …リュウに案内してもらう
  6. 【長野】JR飯山線 …バックパッカーの幸次(道枝駿佑)に出会う
  7. 【長野】JR上境駅~上桑名川駅 …映画『Love Letter』のような雪景色
  8. 【新潟】長岡駅 …ネットカフェにたどり着き、店員の由紀子(黒木華)に出会う
  9. 【新潟】ニュー・グリーンピア津南 …由紀子にランタン祭へ連れていってもらう
  10. 【福島】JR只見駅 …アミの故郷に到着、中里(松重豊)の車に乗せてもらう
  11. 【福島】アミの実家 …アミの母・裕子(黒木瞳)に会う
  12. 【東京】隅田公園 …旅の最後、東京の桜並木を眺める

※参考:ロケーションマップ|映画『青春18×2 君へと続く道』公式サイト
https://happinet-phantom.com/seishun18x2/locationmap/

道中の景色や、もう二度と出会うことがないかもしれない人々との一期一会、僅かな間に繰り広げられた会話がとても心に染みます。また、18年前の台南時代の回想、日本と台湾の景色もうまく連動されていたのが良かったです。

台湾でも大人気な『SLAM DUNK』、鎌倉まで聖地巡礼に行く観光客も多いので、ジミーが最初にそこを訪れることで、微かに残っている童心が垣間見えました。

長野・松本でいきなり張孝全(ジョセフ・チャン)に出会うのが面白かったですが、看板に出ていた「休息是為了走更長遠的路」(一休みするのはもっと長い道のりを歩くため)は台湾でもよく耳にするフレーズで、人生が行き詰ったと感じたジミーにはぴったりの言葉だなと思いました。

飯山線で人懐っこいバックパッカーの道枝駿佑に出会ったとき、「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」——川端康成『雪国』を想起させる一面の雪化粧が本当に美しくて感動しました。ここでほろ苦い初恋、映画『Love Letter』の思い出を回想するのもぴったりです。(許光漢の36歳と18歳の演じ分けが素晴らしすぎて、二人俳優がいるかのようでした)

新潟では黒木華と出会い、ランタン祭に連れていってもらったときも、アミと平溪でランタン飛ばしをした過去とリンクしていて、このあたりから「あれ、アミってもしかして……」と予想がつくようになりました。台湾で一緒に飛ばしたランタン、あのときの願い事は叶えられたのか?ジミーはそんなことを考えながら、新潟で再びアミ―にランタンを飛ばしてあげたのかな。

遠回りをしてたどり着いたアミの実家、福島県只見町。「世界一ロマンチックな鉄道」と称される只見線の景色が本当に綺麗で、寒がりで雪が苦手な私でも一度行ってみたいなと思ったくらいです。松重豊の演技が迫真で、本当に地方にいるちょっと強面だけど親切なおじさんのようでした。

最後にアミの母、黒木瞳と出会い、アミの本当の思いを知るジミー。ここからはずっと涙です。もうアミはこの世にいないだろうと分かっていながらも涙が止まりません。

原作『《青春.18 x 2》日本慢車流浪記』日本旅の道のり

※以下ネタバレがあります※

原作の作者は、青春18のきっぷを使って日本で鉄道の旅をしました。原作のタイトル「18×2」は、青春18きっぷを使って鉄道旅をすることと、その時の年齢が18×2の36歳であることから来ています。

原作者のローカル線鉄道旅の道のりは以下の通りでした。日本に十年以上住んでいる私でも行ったことがないところが多くて凄いです。こちらを参考にして、目的地を決めないローカル線の旅に出てみたいなと思いました。

  1. 【東京】南千住
  2. 【茨城】取手、土浦、水戶
  3. 【福島】郡山、会津若松、福島
  4. 【山形】米沢、山形、新庄
  5. 【秋田】秋田、新屋、羽後本荘、西滝沢
  6. 【新潟】新津、長岡、 直江津、系魚川
  7. 【長野】南小谷、松本
  8. 【山梨】小淵沢、甲府、大月、都留文科大学前
  9. 【東京】高尾、八王子
  10. 【埼玉】川越、大宮
  11. 【東京】日暮里、東京

原作の紀行エッセイを読むと、ジミーに該当する主人公の故郷は台南ではなく嘉義、アミの故郷は福島ではなく秋田で、一部映画のストーリーと異なる箇所もありました。一方、原作と同じ要素はかなり多く、例えば以下は意外と原作と同じで驚きす。旅行の写真と過去の回想が綺麗に交差して、読んでいて切なくなるエッセイでした。

同時に、道中で出会った日本の方々との交流、特にネットカフェやユースホテルのスタッフと日本の職場環境などについて話したことが印象的で、映画でジミーが一期一会の出会いをすることを彷彿させます。

  • 目的地を決めず、ローカル線の旅に出ようと思ったのは、昔アミから届いたハガキを見たのがきっかけ
  • 18歳のときに、KTVで年上の日本人女性アミに出会い、共に働く
  • アミは目的地を決めずに旅をするのが好きで、「旅は次に何が起こるのかが分からないからこそ面白い」と言っていた
  • 『SLAM DUNK』が青春時代を表す
  • 映画『Love Letter』は淡い初恋を表す
  • アミと一緒に映画『Love Letter』を見たあと、アミが突然日本帰国をすることを告げる
  • 「年上だったら付き合ってあげても良いかも」とアミに言われる
  • アミの実家近くまで、親切で熱情的なおじさんが案内してくれた
  • アミのお母さんに会えた、またアミとのお別れの旅になったこと

いつかMr. Childrenの主題歌「記憶の旅人」を聞きながら、映画や原作と同じルートで聖地巡礼したいです。


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