『台湾・クライム・ストーリーズ』第1~3話「脱線」:人は信じたいことだけ信じる【登場人物・感想】

Disney+で配信されている台湾ドラマ『台湾・クライム・ストーリーズ』(原題『台灣犯罪故事』)、第1~3話の「脱線」(原題「出軌」)。センシティブな実際の事件を基にしつつ、親子愛・兄弟愛・夫婦愛について切り込んだ一作。各人の重すぎる愛情や思惑を載せた列車は、平行線のまま走るのか、交わり転覆してしまうのか……?そんなメッセージを受け取りました。

「脱線」のあらすじ

保険会社の調査員である邱文青(チウ・ウェンチン)は、夫の趙彥傑(ジャオ・イェンチー)が列車の脱線事故に巻き込まれ、意識不明の重体になる。

知人で検索官である于晨朗(ユー・チェンラン)と事件について調査を進めるうちに、脱線事故は保険金詐欺のための人為的な事故であると疑う。また、夫には隠し事があったのではないかとも思い始める……。

▼予告動画(繫体中文字幕)

「脱線」の登場人物 / キャスト

※画像は公式Facebook「台灣犯罪故事」より引用しました。

于晨朗(ユー・チェンラン)/ 演:鳳小岳(リディアン・ヴォーン)

邱文青(チウ・ウェンチン)の古くからの友人。台湾に帰国したばかりの検察官。

列車脱線事故は誰かが故意に起きした事件であると信じ、積極的に捜査を行う。

邱文青(チウ・ウェンチン)/ 演:林予晞(アリソン・リン)

保険会社の調査員。保険金の請求に対して一件一件丁寧に調べる。

夫が列車の脱線事故で意識不明の重体になり、于晨朗(ユー・チェンラン)と一緒に事件の真相を調べることになる。

林學文(リン・シュエウェン)/ 演:施柏宇(パトリック・シー)

林家の次男。成績優秀で、医学部に合格する学力があったが、男手一つで家系を支える父親・林東山(リン・ドンシャン)のために医者の道を諦める。

脱線事故の犯人として疑われる。

林學慶(リン・シュエチン)/ 演:薛仕凌(シュエ・シーリン)

林家の長男。父親・林東山(リン・ドンシャン)に認められたいがために頑張るが、勉強ができる弟と何かと比較され、冷遇される。

脱線事故の犯人として疑われる。

趙彥傑(ジャオ・イェンチー)/ 演:施名帥(シー・ミンシュアイ)

邱文青(チウ・ウェンチン)の夫。于晨朗(ユー・チェンラン)の旧友でもある。

「脱線」の感想

※以下ネタバレを含みます!!

実際の事件をベースとしたストーリー

本ドラマは2004~2006年に台湾で起きた列車脱線事故「南迴搞軌案を基にしており、保険金詐欺のためにわざと列車の脱線事故を起こした設定となっています。

実際の事件は、保険金詐欺のために兄弟が犯行し、列車を脱線させたという判決になっていますが、いくつか疑問が残っており、実は冤罪ではないか?という報道もまだ見られます。

ドラマ内では、保険金詐欺として兄弟が容疑者になっていること、ヘビ毒やクロチアピンなどの薬物が言及されること、毒殺の可能性があることなど、実際の事件と似たような設定も多かったです。

歪んだ親子愛・兄弟愛

そのようなセンシティブな事件をあえて取り上げたのは、事件の真相に着目してもらうためではなく、事件の背後に隠された人間の愛情と、愛ゆえ引き起こされた悲劇について描きたかったからでしょう。

まず、ドラマ内では父親の林東山(リン・ドンシャン)は、事業や投資が失敗して多額な借金を背負い、息子二人に苦労させていることに対して申し訳なく思っています。さらに病気で先も長くないと考え、保険金詐欺のために脱線事故で自殺を図りました。息子二人に対する愛情と罪悪感ゆえの行動でしょう。

ただ、取り残された息子二人に関しても、長男の林學慶(リン・シュエチン)は保険金受取人が次男だけになっていることに対して絶望し、幼少期から聡明な弟ばかり可愛がられることを思い出します。警察に追われる弟を守らないといけない責任感に、羨望や嫉妬などの複雑な気持ちが入り混じって、最終的には弟を見殺しにしてしまいます。

次男の林學文(リン・シュエウェン)も、父親に言われて勉強を頑張ったのに、経済的に厳しくなったら今度は医者の道を諦めと、父親のせいで夢を諦めないといけない悔しさを抱いています。父親に一番可愛がられ、保険金を全額もらえることを知っても、父親からの愛を素直に受け入れられない様子でした。

結果、お互いのことを愛し合い、心配していたはずなのに空回りしてしまい、最後は全員命を落としてしまうという悲しい結末になりました。。

夫婦仲は平行線だったのか、または脱線していたのか?

親子愛・兄弟愛以外に、ドラマ内では夫婦愛についての問いかけもありました。

邱文青(チウ・ウェンチン)は脱線事故で夫の趙彥傑(ジャオ・イェンチー)が意識不明となり、独自に調査を進める中で、夫は実は不倫していたのではないかという疑惑が出てきます。

そして検索官の友人・于晨朗(ユー・チェンラン)と再会し、一緒に調査を進めるうちに、実はもともと愛していたのは于晨朗(ユー・チェンラン)だったという意外な事実が……!

于晨朗(ユー・チェンラン)がなぜ邱文青(チウ・ウェンチン)と結婚せず、海外に飛び立ったのかはよく分からないが、趙彥傑(ジャオ・イェンチー)はそのことを知りつつ、愛情深く邱文青(チウ・ウェンチン)との夫婦生活を続け、彼女を待っていたのでしょう。

夫の不倫関係を疑っていた邱文青(チウ・ウェンチン)は、夫は不倫していなかったことを必死に探していたかと思いきや、実は自分が精神的に不倫していたので、罪悪感から「夫だって不倫していた、だから自分は悪くない」という証拠も求めていたのです。

ちなみに、ドラマの中国語原題出軌」(ㄔㄨ ㄍㄨㄟˇ / chū guǐ)は、「列車の脱線」を意味しますが、「浮気・不倫」の意味もあります

「人は自分が信じたいことだけを信じる」

このドラマで一番心に残ったセリフがあります。

真相は変わらない。ただ人は自分が信じたいことだけを信じる」という言葉です。ちょうど最近見た日本ドラマ『MIU404』第2話でも「人は信じたいことを信じる」というエピソードがあり、印象に残りました。

公式Facebook「台灣犯罪故事」より

まさに邱文青(チウ・ウェンチン)は「夫は不倫していなかった」と「夫だって不倫していた」どちらを真実として信じたいのか、気持ちが揺れ動いていました。最終的には自分の知りたい方向が実際の事実と一致して、形見として授かった子供と一緒に生きていけると良いなと思いました。

時代背景(2000年代)を感じる場面設定

実際の事件は2004~2006年に起きていますが、このドラマも趙彥傑(ジャオ・イェンチー)が2004年10月31日 午後11:48に亡くなると伝えている通り、2004年を時代背景としています。このことは、視聴者にも分かるように服装や小物などで工夫しています

例えば、テレビかラジオから「テコンドー選手の陳詩欣(チェン・シーシン)と朱木炎(チュー・ムーイエン)がオリンピックで活躍」というニュースの音声が流れる場面がありますが、この二人の選手は2004年8月のオリンピックで、テコンドーの金メダルを獲得しています。当時台湾で空前のブームとなったので、名前を聞いただけで2004年かなと推測できました。

また、NOKIA(ノキア)のスマートフォンではない旧式の携帯を使っている場面からも2000年代を思い起こします。私も2000年代はNOKIAの携帯を使っており、当時の台湾ではかなり主流のブランドなので、懐かしいなと思いました。

しいて残念だった点をあげるとすれば、「林學慶(リン・シュエチン)からお金を取ればいいのに、なぜ殺す必要があったのか?」「刑事ではないのに、検察官はここまで自ら捜査するのか?」など、一部疑問に残る点があったり、兄の林學慶(リン・シュエチン)だけ台湾語を話し、弟の林學文(リン・シュエウェン)は中文(北京語)で応じ、台湾語は学がない人がしゃべるステレオタイプを表している点があります。

ただ、実際の事件から人間の心理に迫ろうとしたところや、とにかく薛仕凌(シュエ・シーリン)の演技がうますぎて、全体的に面白かったです。

公式Facebook「台灣犯罪故事」より

薛仕凌(シュエ・シーリン)「我々の方こそ被害者なのに、疑うなんてあんまりだ!」という悲鳴で、彼は一体被害者なのか?隠蔽を手伝った課題者なのか?自分でも分からなくなりました。


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